【 モビリティ × 金融 】の未来

金融会社から見たモビリティ

決済できるモビリティ

テレマティクス保険の価値創出には決済できるモビリティの側面がある。テレマティクス保険は、保険会社が情報を動的に捉えることで新たな価値創出を実現した保険商品。このように移動手段としてのモビリティを考える際「カネ・情報の移動」がもたらす付加価値が重要な観点となる。テレマティクス保険は、保険会社が情報を動的に捉えることで新たな付加価値を実現した商品である。テレマティクス保険は、保険会社が契約のスマートフォンもしくは専用のデバイスから走行距離や運転行動等の情報をリアルタイムに取得することでフレキシブルな保険料設定を可能にする。通常、PAYD型では実走行距離が短いほど、PHYD型では安全運転であるほど、保険料が安くなる。このように保険料の算出基準を契約者から発信することで、契約者自身が月々の保険料を意識し、コントロールしようとする新しい保険の形が実現する。これまでにない情報の移動によって、ユーザーと保険会社が大きな価値を享受するというわけだ。
モビリティのおける決済サービスは実現しつつある。くらしの中でのヒト・モノの移動とカネの移動の付随性を考えれば、コネクティッドカーを前提としたモビリティにおける決済サービスは価値を生み出すだろう。欧米のファーストフードでは「モバイルオーダー&ペイ」方式が浸透している。これはユーザーがモビリティであらかじめ近場のファーストフード店を検索・商品を注文し、到着時間を推定、支払い方法を選択することで、店に到着した際に待ち時間なく商品を受けとることができるサービスだ。今後はファーストフードに限らず、スーパーマーケットで食料品を購入する際や不在時の宅配物をドライブスルーで受け取るなど、利用シーンは広がりを見せるだろう。モビリティ自体に決済機能が備わることで、購入、移動、到着、受け取りがシームレスなユーザー体験を生み出すことになる。

シェアできるモビリティ

カーシェアにおける金融サービスによる収益化はできるだろうか。共有物としてのモビリティを考える際、シェアリングが浸透した社会では新たな金融のあり方が検討される。決済であれば利用料金支払いの柔軟化、簡素化、融資を実現するCtoCカーシェアの支援サービスがある。トヨタ自動とアメリカのスタートアップ「Getaround」が提供するカーシェア向け融資が挙げられる。本来、車両の購入代金は自動車メーカーに支払い、カーシェア収入はそのサービス提供事業者から振り込まれるというように別々の金融サービスを利用することになるが、このビジネスモデルでは、トヨタ自動車から購入した車両の支払いを「Getaround」で得たカーシェア収入から差し引くことで一元化できている「Getaround」のプラットフォームのテクノロジーと車両を購入する際のファイナンスの部分を連携させることで、ユーザー利便性を高めている。このようにトヨタ自動車は個人が所有するマイカーだけでなく、カーシェア向けにモビリティと金融機能を提供することで、モビリティ市場の中でのカーシェア市場を拡大させ、大きな金融収益化を狙う。

情報収集できるモビリティ

空間としてのモビリティは完全な自動運転を前提としたもの。自動運転はユーザーに「走るリビング」「走るオフィス」といった新たな空間を提供する可能性を持っている。これにより、家や職場で享受しているあらゆるサービスがモビリティという空間で展開可能になる。そこで金融機関と決済や与信機能を提供する必要が出てくる。具体的には車内決済環境の整備、モビリティ空間を資産と捉えた変動費にすること。つまり、金融機関はモビリティ空間のコト化に取り組むことが求められる。たとえば、決済機能付き車両であれば、モビリティの利用履歴や行動ログを与信に活用することもできるだろう。Visaのコネクティッドカー向けサービスでは、先進の決済セキュリティやワイヤレス技術、センサーやBluetoothを搭載し、運転席にいながらダッシュボードに触れるだけで決済ができる。支払い情報はクルマに組み込まれ、クルマから他のデバイスへの支払いも自在かつ安全に実行される。支払い履歴が蓄積され、ユーザーの嗜好が反映されるについて利便性の向上も図れる。

資産価値を持つモビリティ

モビリティのREIT化は進むだろう。不動産のようにモビリティがキャッシュフローを生む投資対象となりえるかが議論され始めた。モビリティに集まる情報を活用し、不動産実物投資やREITのようにモビリティ投資としての金融商品を開発することが考えられる。REITは不動産投資法人が投資証券を発行し、投資家が証券を購入することで賃料などの不動産が生み出すキャッシュフローや売買で得た収益を投資家に分配する仕組み。カーシェア収入や情報提供収入など、モビリティがキャッシュフローを生み出すことができれば、現在の不動産のようにと投資対象になりえる。モビリティアセットファイナンスの可能性は大きい。トヨタ自動車とGetaroundのビジネススキームにモビリティアセットファイナンスというものがある。企業が保有する資産の信頼力を裏付けとし、モビリティ~発生するキッシュフローを返済原資とする資金調達方法。現在は船舶で実現していることから、モビリティがキャッシュフローを生み出すことができれば投資対象になりうる。

まとめ

モビリティと金融を掛け合わせることは必須であり、未来の社会の基盤でもある。いずれにしてもテクノロジーによって取得したモビリティ情報に付加価値をつける、あるいは情報を基に新しいサービスに変化させている点が特徴的だ。共通して言えるのはユーザーに金融を意識させないこと。ユーザーは金融サービス好んでは享受しようとしないが、くらしに金融が介在しない場面はない。今後、金融はモビリティサービスとコラボレーションすることにより収益化を図ること、情報活用により付加価値を向上することが課題となる。「決済できるモビリティ」「シェアできるモビリティ」「情報収集できるモビリティ」「資産価値を持つモビリティ」それらを組み合わせて課題をクリアすることが金融会社のミッションとして重要性を増すだろう。とりわけトヨタ自動車のファイナンス機能を利用した新サービスの創出。現状であればトヨタ自動車発のサブスクリプションモデル「KINTO」がその鍵を握っている。

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青山 武史

略歴

1977年生まれ。1998年にJ-Groupホールディングスに入社以来、ブランドマネージャーとしてマザーズ上場に貢献後、観光業界を中心に事業再生、戦略立案、M&A戦略立案、ビジネスデューデリジェンス、新規事業開発、組織変革等の業務に従事。2012年よりJBR事業部長に就任し、マーケティング部門を統括。2018年よりエイチームにてPMとして新規事業の立ち上げに携わる。。不動産、生活関連、物流業界でインターネットを軸にビジネス開発を行った経験をもとにモビリティ革命を推進する活動に邁進する。企業への戦略コンサルティング実績多数。

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