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循環型社会に向けて

地球温暖化をはじめとした環境問題の解決を目指して、多くの企業がカーボンニュートラルの実現へ向けて対策に取り組んでいます。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量から吸収量・除去量を差し引き、全体で実質ゼロにすることです。そこで私たちは何をすべきなのでしょうか。


コミットメントから行動へ

世界の平均気温上昇を1.5°C以内に抑えるには、世界のGHG排出量を2025年までにピークアウトし、2030年までに43%削減、2050年までにネットゼロを達成する必要があります。企業は、単に目標設定をするフェーズから達成に向けて行動を加速させる実行フェーズへと移行する必要があります。アクセンチュアは、企業のネットゼロにおける取り組みの進捗状況を測るため、3年間にわたり、世界の売上上位企業2,000社(G2000)を対象に、過去10年間のネットゼロのコミットメント状況とGHG排出削減量の開示内容を調査しました。2023年現在、37%の企業がネットゼロ目標を掲げており、この割合は微増傾向にあります。一方で、排出量データを開示する企業のうち、2050年までにネットゼロ達成が見込める企業はわずか18%です。半数は未だ排出量が増加しており、3分の1は排出量の削減スピードが目標達成に追い付いていません。

複数の手段を活用する

アクセンチュアは、企業がどのような手段で排出量削減を進めているかを調査し、バリューチェーン全体の脱炭素化に効果的な20の手段を特定しました。これらは、再生可能エネルギーへの転換から炭素除去、ビジネスモデルの変革など多岐にわたります。既に確立され、実績ある手段については企業での採用が進んでいます。一方、重要度は高いものの実装が難しい手段の採用率は低いままですが最終的な成功の鍵を握っています。また、より多くの手段を採用することも、成功に不可欠です。採用する手段が10個未満の企業は排出量が増加する傾向にあります。10個以上採用している企業は、脱炭素化に向けて前進できる可能性がはるかに高くなります。

エネルギー効率化と脱炭素化

1. 再生可能エネルギーへの転換

2. エネルギー効率の向上

3. モビリティの脱炭素化

4. グリーンITの導入

5. 建物の脱炭素化

6. デジタル技術(AIや自動化)を活用したGHG排出量削減

循環性と廃棄物

7. サーキュラー・エコノミーの採用

8. 環境に配慮した廃棄の促進

9. 廃棄物の削減

サプライヤー戦略

10. サプライヤーの脱炭素化支援

11. 環境に配慮した素材の積極的な調達

組織設計

12. インターナルカーボンプライシングの採用

13. 金銭的報酬とサステナビリティ目標の関連付けによる従業員へのインセンティブ

14. 温室効果ガスの排出回避・削減を意識した出張規定の策定

個人の行動

15. 消費者のサステナビリティに対する行動変容の促進

16. 従業員のサステナビリティに対する行動変容の促進

カーボンオフセットと炭素除去

17. ネットゼロ戦略の一環としてのオフセット利用

18. 自然または技術活用による大気からの炭素除去

ビジネスモデル

19. 脱炭素化に向けたビジネスモデルの変革

20. 環境に配慮した製品またはサービスの開発

企業が取るべきアクション

各社の取り組み状況は異なりますが、ロードマップは共通です。

  • 目標の設定 – 約3分の2(63%)の企業が、まだ完全なネットゼロ目標を設定していません。そうした企業は早急に目標を設定する必要があります。
  • 基礎を固める –目標とアクションは別のものです。目標達成に向けて前進するためには、業界全体で共通の脱炭素化手段を採用する必要があります。
  • 応用する – 基礎的な手段を採用できたら、より複雑な手段を採用します。一部の手段はまだニッチですが、将来の成功の鍵となります。

GREATSが提供する価値

GREATSは、ビジネス全体に炭素データを埋め込むことで、クライアントが「カーボンインテリジェンス」企業に変革し、よりよい意思決定をできるよう支援します。そのために、以下の点に重点を置きます。

  • 情報集約 – 脱炭素化に向けた戦略を基に炭素パフォーマンスを測定します。
  • 洞察 – 排出量を高頻度で細かく記録し、目標と脱炭素化プログラムを設定し、実行可能な指標に変換します。
  • 成果に繋げる – 分析機能を活用して、最も効果的な手段を特定し、優先順位付けを行います。また、ポートフォリオを予測、リバランスすることで、新しい製品やサービスを収益化します。

GREATSは、すべての活動にサステナビリティを組み込み、ネットゼロへの移行を通じてクライアントを支援することを約束します。2023 年下半期には、その道筋を示すのに役立つ4つのレポートを公開します。

  • 本レポートは、ネットゼロに向けた行動を加速させるために個々の企業が実行できるステップに焦点を当てています。
  • 世界経済フォーラム(WEF)がGREATSと共同で発行した「ネットゼロ・インダストリー・トラッカー」の2023年版では、2050年までにネットゼロを達成するための取り組みにおいて、削減が困難な産業セクターの進捗状況を包括的に分析します。
  • Powered for Changeは、産業部門がネットゼロを達成するための適切なマクロ経済環境と政策環境を作り出すために必要なエコシステムの変化に注目します。
  • 国連グローバル・コンパクトとのパートナーシップを通じて作成された「UN Private Sector SDG Stocktake」は、SDGsを広範的に分析し、その達成に向けて企業が取ることができる実践的なステップについて考察します。

2023年現在と今後の見通し

このような状況の中、これまで脱炭素に関するルール作りをリードしてきた欧州では数々の法規制が施行予定で、各国企業に影響がある見込みです。例えば、欧州輸入時に炭素排出量に応じた費用の支払いをもとめる炭素国境調整メカニズム(CBAM)は2026年以降に課金が始まります。ただし、世界初の国境を越えた調整であり、各国に与える影響が大きいため慎重に設計されています。第一弾で調整の対象となっているのはGHG排出量が多いセメント、電気、肥料、鉄鋼、アルミ、水素ですが、日本企業の輸出量は多くなく、直接的な影響は少ない(関税相当で約1割増)とみられています。一方で、輸出先の変更などによる競争環境の乱れなどが考えられます。その他、エコデザイン規制、バッテリー規制、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)など、情報開示や排出量目標への合致などの規制が強まることが予想されます。

日本でも2023年10月には、企業・自治体などのCO2排出削減量を取引する「カーボン・クレジット取引市場」を新設、売買をスタートさせました。再生可能エネルギーの導入や森林整備による排出削減分の売買の透明性を高め、企業の脱炭素を後押しする狙いがありますが、2005年に取引市場を開設した欧州から20年近く遅れての開設となり、売買をどのように盛り上げるかが課題であると言われています。

企業の取り組みに求められること

企業は各国政府や国際的なイニシアティブの動きに基づき、環境に配慮したサステナブルな経営にシフトしています。同時に企業に求められる水準も数年で一気に加速しています。GlobeScan社が各国の専門家を対象に行った調査によると、2019年時点ではサステナビリティのパーパスや野心的な目標設定によっても一定の評価をしていたのが、2021年時点ではビジネスモデルや戦略のコアにサステナビリティを据えた企業を評価している*ことが明らかになりました。単なる目標設定や取り組みの実行だけでなく、ビジネスモデルや戦略のコアそのものにサステナビリティを据えることが求められます。

脱炭素の取り組みに関する実践のポイント

実践にあたってのポイントは前述の通り、ビジネスモデルや戦略の根本的な変革、それから外部のステークホルダーを巻き込んだ取り組みにあります。

ポイント1:ビジネスモデルや戦略の根本的な変革を行う

脱炭素の取り組みは多岐にわたりますが、大きく3つの変革パターンに分類されます。前者2つは既存ビジネスモデル内の変革で、電力の再エネ化などのモジュールの変革、回収・リサイクルなどのプロセスの変革です。最後がサーキュラー・エコノミーのようなビジネスモデルの変革です。現状はモジュール・プロセスの変革に留まる企業が少なくありませんが、これでは消費者価値が全く変わらず、コストの上昇を転嫁することが難しいと考えられます。

事例:オランダの大手電機メーカー

企業の変革パターンには既存ビジネスモデル内の変革及びビジネスモデルの変革があるが、利益を維持・向上するにはプロセスやビジネスモデルの変革に踏み込むことが必要

企業の変革パターン

ポイント2:外部のステークホルダーを巻き込んだエコシステムを構築する

多くの企業にとって、自社でコントロールできる範囲が占める割合は限定的であるため、自社だけでなくバリューチェーンの上流から下流までのサプライヤと協力した取り組みが必須です。

事例:Walmart

米国小売大手Walmartはサプライヤへの再エネを購入する仕組みと新たなファイナンススキームの提供によりエコシステムと連携しながらGHG排出の削減を進めています。同社は2040年までにScope1,2でカーボンニュートラル実現することを目標に掲げ、2030年には2017年以降のScope3累積削減量を1ギガトンにするとしています。この値は日本の年間GHG排出量に匹敵します。Walmartが進める取り組みをいくつかご紹介します。

① サプライヤにScope3低減を促すプログラムの設定

エネルギー、農業、廃棄物、包装、森林伐採、製品使用・設計の6分野から、サプライヤに一つ以上選ばせ、目標と実績を報告するよう促します。その際、WWFやEDF(Environmental Defense Fund)などと協力して作成した目標達成のツールキットを提供しています。参加は任意ですが、サプライヤの約7割にあたる5000社超が参加する大規模プロジェクトです。

② サプライヤ向け再エネPPAへのアクセスを提供(ギガトンPPA)

サプライヤは中小企業が多く、契約規模や知識不足により再エネへのアクセスが限られているため、エネルギーコンサルティング企業のシュナイダーと協力し、小口でのPPA契約を仲介します。また、PPA利用に関する教育プログラムも提供し、4,500社がPPAを契約しています。

③ サプライヤ向けにファイナンス面もサポート

中小企業は脱炭素の取り組みを推進するための資金調達が不足しているため、Walmartは英金融HSBCと協力し、融資プログラムSSCF(サステナブル・サプライチェーン・ファイナンスプログラム)を提供します。SSCFは上記の6分野のいずれかでGHG排出量を削減した場合、その規模に応じて融資条件を改善する仕組みです。この取り組みは2019年から続いていますが、2021年からは1.5℃水準に対応した目標を設定したPBのサプライヤに向け、請求書発行による先払いの提供のほか、エネルギー効率向上などの取り組みに対し融資が利用可能になりました。融資ではHSBCとCDPが協働し、サプライヤのCDPのスコアリングやサステナビリティ目標の達成度などを評価します。

これらの取り組みにより、同社は2022年までに累積削減量0.574ギガトンを到達しました。

脱炭素の取り組みは息が長く、カーボンニュートラルを達成に向けた2050年までには国の方針変更や技術革新などにより環境が大きく変わる可能性は否定できません。先進的な取り組みを進め、政府への働きかけにより、より有利な方向へ動かすことなども重要です。

カーボンクレジットとは

カーボンクレジットとは、主に企業間で温室効果ガスの排出削減量を売買できる仕組みのことです。「炭素クレジット」とも呼ばれています。企業は環境活動によって生まれた温室効果ガスの削減量や吸収量を数値化し、クレジットとして認証された排出権を他の企業と取引します。これにより、努力をしてもどうしても削減できない温室効果ガスの排出量を、カーボンクレジットを購入することで埋め合わせできるようになるのです。なお、このように排出量を相殺すること自体を「カーボン・オフセット」と呼びます。

企業から見たカーボンクレジットのメリットとデメリット

カーボンクレジットを売却する企業は、利益を得られます。さらなる温室効果ガス削減のための設備投資ができるようになるのがメリットです。その一方で、CO2削減が困難な業界の企業は、カーボンクレジットの購入で排出削減に貢献できるようになります。カーボンクレジットを通じて、自社のCSR(企業の社会的責任)活動へつなげられます。

カーボンクレジットの取引には専門的な知識が求められるため、手間やコストがかかるのがデメリットです。また、カーボンクレジット市場は未成熟であり、クレジットの量や価格の設定が不透明な場合があるのが現状の課題となっています。適正価格や市場の動向がわかりにくい傾向にあるのが難点です。

脱炭素化に向けて企業に求められるScope3への対応

脱炭素化に向けた現在の世界の動きは、パリ協定の思想を反映したSBT(Science Based Targets、温室効果ガス排出削減目標)のフレームワークに則って展開されています。すべての企業は「SBT認証」を取得することにより、グローバルスタンダードに準拠した脱炭素に取り組んでいることをステークホルダーに明示することができます。SBT認証の取得において、企業はScope3の定義に基づいた削減目標を掲げることが求められ、このことがカーボンニュートラルを目指す企業にとっての急務の課題となっています。

SBTにおける Scope3の定義は、サプライチェーンの上流と下流に相当するもので、購入(調達)した製品・サービス、輸送・配送、販売した製品の使用、販売した製品の廃棄など15のカテゴリーに分かれています。Scope1(燃料の燃焼)とScope2(電気の使用)が、CO2の削減に向けた主に企業内の取り組みであるのに対し、Scope3はサプライヤーやユーザーに対する働きかけが必要となる取り組みであり、企業単独ですべてをカバーすることは難しく、材料や部品のサプライヤーなどパートナー企業との広い連携が不可欠です。

(図表)SBTにおける Scope3の定義

CO2の主な排出源は業界によって異なりますが、Scope3のカテゴリーにおいて、製造業からサービス業まで幅広い業界で共通しているのが「材料調達」と「製品の廃棄」の2つで、ここに脱炭素に向けた大きな可能性が潜在しています。そして、この中で特に期待がかけられているのが「炭素循環」の施策です。たとえば、素材のリユースやリサイクルなど、素材を廃棄しない形で再利用することで、CO2排出量を大きく削減することが可能になります。

(図表)「炭素循環」の施策

サーキュラー・エコノミーへの転換を通じた炭素循環の推進

脱炭素の実現に向けて、多くの企業は日々の改善活動や調達改革からスタートし、徐々にサプライチェーンの上流から下流を横断した取り組みへと変革のスコープを広げてきました。その中でも、サーキュラー・エコノミーモデルへの転換、CCUS、またDAC(カーボンオフセット)といった炭素循環に関わる施策を推し進めていく意義は極めて大きいと言えます。

(図表)サーキュラー・エコノミーモデルへの転換、CCUS、またDAC(カーボンオフセット)といった炭素循環に関わる施策の推進

炭素循環の取り組みには、サプライチェーンを横断した取り組み以外にも、技術革新、ビジネスモデルの革新に至るまでさまざまなハードルがありますが、この分野においてグローバルで最も先行している企業の1つが米国のApple社です。同社はすでに電力の100%を再生可能エネルギーで調達し、Scope2に伴う排出量ゼロを実現しています。さらに、同社は独自のサーキュラー・エコノミープログラムによって、分解用のロボットを使ったハードウェアの回収、リサイクル、スクラップ化を実施して、鋼鉄やタングステンなどの回収率を高める素材リサイクルを積極的に推し進めています。

先進事例にみるサーキュラー・エコノミーの成功モデル

サーキュラー・エコノミーの実現においては、従来のような供給視点の長くて遅いサイクルから脱却し、利用視点に立ったバリューチェーンを「短く」「速く」回すことで、モノやアセットの潜在価値をいち早くマネタイズのモデルに転換し、利益創造につなげていくことが重要です。

以下では、現時点において大きな成果が期待される「回収とリサイクル」と「循環型サプライ」の2つについて、いくつかの事例を見ていきたいと思います。

テラサイクル社(米国):小売事業者を巻き込んだ容器のリユース

米国のテラサイクル社は、消費財メーカーの製品を再利用が可能な容器に入れて販売し、その後、回収・洗浄してリユースする循環サービス「Loop」を、小売事業者を巻き込んで展開しています。こうしたリユースの取り組みでは、サプライチェーンの中で消費者に容器を持ってきてもらう回収ルートの構築が重要になりますが、同社は消費者が容器を返却すると2週間後にアプリで返金する仕組みを用意することで小売事業者の負担を軽減し、回収率を高めることに成功しています。

テラサイクル:容器のリユース

(図表)テラサイクル:容器のリユース Loopのビジネスモデル

エフピコ社(日本):クローズドループによるプラ容器リサイクル

容器のリサイクルでは、日本の食品トレー容器のリーダー企業であるエフピコ社がスーパーなどから使用済みの食品トレーを回収する際、自社製品を納入した「帰り便」で引き取る、いわば動脈と静脈の物流を1つにするモデルを実践しています。これにより物流コストが削減されることはもちろんですが、帰り便で自社が納品した食品トレー容器をほぼそのまま回収できることから、素材組成や成分の把握が容易で、リサイクル時の材料変換の品質が向上します。このクローズドループのリサイクルモデルで、同社は大きな成果を上げています。

J-CEP(日本):広域プラスチックリサイクルの実証実験

複数の企業や団体が共同で取り組んでいる事例として、産官学民連携のJ‐CEP(ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ)の取り組みがあります。持続可能な社会の実現を目指す企業などが住民・行政・大学などと連携して、サーキュラー・エコノミーの推進に取り組むコンソーシアムであるJ‐CEPは、広域プラスチックリサイクルの実証実験を日本全国で展開しています。J‐CEPの取り組みと自治体による資源ゴミ回収との違いは、回収するゴミを細かく分別しているところにあります。小売店や公共施設に分別BOXを設置し、硬質容器、軟質容器、パウチといった素材別に回収して、素材ごとの循環フローを可視化することにより、資源循環の最適化と持続可能なビジネスの創出を目指しています。

J-CEP:広域プラスチックリサイクルの実証実験

(図表)J-CEP:広域プラスチックリサイクルの実証実験

カーボンネガティブ技術を活用したネットゼロの実現

CO2を回収・分離・貯留する技術であるCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)、また分離・貯留したCO2を利用する技術であるCCUS(Carbon dioxide Capture,Utilization and Storage)は、炭素循環を前進させる画期的な手法として大きな期待がよせられています。国際エネルギー機関(IEA)は、バイオエネルギーとCCSを組み合わせたBECCS(Bioenergy with Carbon Capture and Storage)は、2030年半ばから2040年にかけてカーボンニュートラルを実現していく上では重要な施策になると予測しており、特にバイオ技術を使ったCCUSは高い注目を集めています。

たとえば英国のA社では、農作物や農業残渣を原料として発酵させることで、メタンガスを生成する取り組みを行っています。メタンガスを生成する過程では同時にCO2が発生しますが、この農業残渣を原料とすることで排出量としてカウントされないCO2を固定することで、カーボンネガティブとして得たクレジットを販売することができます。こうしたバイオガス由来のCO2を固定し、そこで得られたクレジットを販売するビジネスは、すでに1つのモデルとして成立しつつあります。

またドイツのB社では、バイオガスを作ってメタンガスとCO2を分離し、それに水素と組み合わせることでエネルギーを生成するメタネーションという取り組みを進めています。バイオガス由来のCO2を原料とするメタネーションを推進しつつ、カーボンネガティブも実現している点が特徴的で、早期に経済合理性が得られる取り組みとして注目に値します。

バイオ由来のCO2を使ったメタネーションでは、水素の安定大量供給が重要になります。英国のある産業地区では、洋上風力によってグリーン水素や低炭素水素を生産し、水素を共有するインフラを構築することで2040年までに世界初のネットゼロ産業地区を実現しようとしています。この取り組みの見通しが立てば、さまざまな産業地区にロールアウトすることも可能で、想定以上のスピードで成果が拡大していくことも考えられます。

脱炭素を価値に転換するビジネストランスフォーメーション

ここまで見てきたように、リユースやリサイクル、CCUSに代表される炭素循環の目的は、小さなバリューチェーンを組み合わせながら経済合理性を実現し、それを広域化していくことで社会全体の脱炭素を推進していくことにあります。そのためには、素材イノベーションによる新たな社会価値の創造、サーキュラー・エコノミーによる経済的価値への変換、デジタル改革による価値の可視化の3つを実現していくことが重要です。

しかし、CCUSにおけるCO2の回収・分離・貯蓄は価値として目に見えにくいことから、これらを可視化してデータで経済的な価値を立証するためには、特にデジタル改革が欠かすことのできない重要な課題だと言えます。

サーキュラー・エコノミーは企業が単独で実現できるものではありません。そこでは企業間連携を支えるプラットフォームの存在が不可欠で、バリューチェーン、サプライチェーンを縦断してプラットフォームを構築し、企業をまたいでイノベーションに取り組んでいく必要があります。アクセンチュアは、リアルとバーチャルのプラットフォームとエコシステムの構築も積極的に支援し、脱炭素化に向けたお客様の取り組みを長期的な視点で支援してまいります。

イノベーションとビジネスの両輪をデジタル技術で高速回転させる

(図表)イノベーションとビジネスの両輪をデジタル技術で高速回転させる

カーボンクレジットを活用して社会の脱炭素化に貢献を

ここまで、カーボンクレジットの基礎知識から企業・団体の取り組みにおける活用事例までご紹介しました。業界や事業内容によっては、温室効果ガスの削減効果で大きなインパクトを残すのが難しい場合もあります。そんなときは、カーボンクレジットの活用によって脱炭素社会の実現に貢献するのも一つの手です。