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3Dプリンタ

文章最終更新日:2023年12月22日

トレンド概要

3Dプリンタは、少量を速く安くだけでなく、複雑な構造をもつ製品の量産にも広がりはじめる

3Dプリンタは、金属や樹脂などの層を順番に重ねて(積層)、溶融・焼結などの化学反応によって立体的な造形を行う機械である。本レポートでは一般的に使用される広義の積層造形/付加製造(AM: Additive Manufacturing)技術全般を扱うが、特に製造業で既に導入が進んでいる3Dプリンタ中心にその動向を示す。

一般的に、金属や樹脂を射出成形やプレス加工などの方法で加工する場合は、金型を用いる。これらの加工方法は量産ができるため生産性に優れるが、金型を作る時間やコストがかかる。他方、3Dプリンタは金型を使わず、金属や樹脂などを重ねて造形する。そのため、試作や補修部品など少量生産に向いており、黎明期の1980年代にはラピッドプロトタイピング(rapid prototyping、「速い試作品」の意)と呼ばれた。また、3Dプリンタは金型の製造・在庫コストや材料費(除去して廃棄する部分がないため)、リードタイムを減らせるなど、経済的メリットが大きい。このような小回りの利きやすさから、コロナ禍ではフェイスシールドや人工呼吸器の試作・早期量産に活躍した。

また、材料を層状にして重ねるため、これまでの加工方法では難しかった中が空洞などの複雑な立体構造も造形できる。それによって剛性や放熱、重量といった特性達成のための最適な構造や、これまでにないデザインも実現可能となった。加えて、順番に重ねながら材料組成を変えた一体成形の構造物も作ることができ、それらは部品の組立・結合を要しないため、製品の耐久性や軽量化といったニーズにも応えられる。このような特徴から、近年は試作や少量生産にとどまらず、従来は工作機械や切削工具で製造されていた高付加価値製品の量産での活用も始まっている。

他方、造形に時間がかかる、造形サイズに限界がある、使用できる材料種類が少ない、人材の育成・確保がまだ不十分であるといった課題がまだ残っている。

既存の加工方法の課題・限界と、3Dプリンタのメリット

出所:Uzabase作成

3Dプリンタには素材や造形方法の組み合わせによって主に7種類ある

2009年に米国の民間規格制定機関ASTM InternationalがAdditive Manufacturing(積層造形、AM)という言葉を定義し、委員会(F42)が発足した。この定義により、概念が試作に限らない製造方法として拡張され、その後の注目・拡大につながった。

3Dプリンタには様々な種類があり、ISO(国際標準化機構)では素材や造形方法によって主に下記のように分類されている。

代表的な3Dプリンタの方式

出所:Uzabase作成

2010年代から各国が3Dプリンタを重視、品質保証面では国際規格の検討が進む

3Dプリンタは、方式によっては1980年代から技術は存在していた。しかし、本格的に普及しはじめたのは、2009年と2014年にそれぞれStratasys(USA)のFDM方式と3D Systems(USA)のSLS方式に係る基本特許が切れた後である。特許切れを受けて、低価格の開発が進められるようになり、新規参入や競争が激化した。

各国の産業政策でも、国策的に研究開発を進めたり、研究開発を進める機関が作られたりするなど、重視されるようになった。たとえば、米国では2012年にAmerica Makes、日本では2014年に技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)が設立され、ドイツのIndustrie 4.0でも3D プリンタはマス・カスタマイゼーション(顧客要望を個別対応しながら大量生産)に寄与するものとされている。

米国では、2022年に米国の中小企業への3Dプリンタ導入の支援とサプライチェーンの柔軟性向上を目的として「Additive Manufacturing Forward」が立ち上げられた。参加企業であるGE Aviation(USA)、Lockheed Martin(USA)を含む製造業大手5社が、サプライヤーとなっている米国内の中小企業から、3Dプリンタで製造された部品を購入することなどを公約している。

中国では、政府が2015年に「中国製造2025」を発表した際に、積層造形技術を中核技術として位置付けており、「積層造形(付加製造)産業発展行動計画」(2017-20)、「積層造形標準行動計画」(2020-22)が公布され、2022年までの業界基準の標準化目標が定められた。2023年12月確認時点で積層造形用材料、技術、設備などの方面について48の国家基準が施行されている。また、2021年から、全国人民代表大会、工業情報化部、発展改革委員会などの政府部門が発表した一連の発展策において、スマート製造の加速発展や、医療科学分野の技術課題解決、廃棄物のリサイクルシステムの構築における再製造技術の発展、工業分野の脱炭素化などの一部として、積層造形技術および3Dプリンタ技術の研究加速と応用拡大が言及されている。

一方、3Dプリンタでは1層ずつ積層して製品を製造するため、個々の製品のばらつきや欠陥が生じる可能性が高く、特に最終製品に活用するにあたっては品質評価・保証とその規格統一が課題となっている。これに対し、ISO/ASTM52900によって積層造形(AM)について用語や定義、原理などが定義され、対応するAM特有の品質保証手段としてISO/ASTM52920が定義されている。この規格が制定されたことにより、3Dプリンタで製造された製品の品質の一貫性、再現性の保証支援やAMに対する信頼性向上が期待される。

武器輸出関連規制の動向は注目が必要

3Dプリンタは、適切な機械・素材・設計データがあれば武器製造も可能なため、科学者団体や国際機関には火器や生物兵器などの大量破壊兵器の拡散につながるのではないかと危惧されている。

国際的な武器輸出関連規制としては、通常兵器分野でワッセナー・アレンジメント(WA、旧ココム規制)があり、3Dプリンタは現時点ではリスト規制対象に明示的には含まれていない。ただし、WAでの議論を受け、日米などでは積層造形の能力を有する工作機械については場合によって規制対象となるよう国内規制を改正している。日本は、2022年にウクライナ情勢に伴い、ロシアへの3Dプリンタとそれに用いる金属を禁輸対象に加えた。

また、米国では3Dプリンタによって製造された未登録銃「Ghost Gun」の拡散が問題となっており、2022年には、銃器の組立キット販売業者が身元確認を行うことや、銃器製造業者、取扱業者がシリアルナンバーを持たない銃器にナンバーを付与することなどを盛り込んだ最終規則が公表された。そのほか、カナダや英国、オーストラリアなどにおいても、3Dプリンタで製造された銃に関して厳しく規制を行っているが、逮捕者は増え続けている。

マネタイズ

コスト要素は、既存の加工方法と真逆の効き方

最適な加工方法は、加工要件や数量などによって異なる。そこで、コスト要素を分解し、どのような場合に3Dプリンタや既存の加工方法のメリット・デメリットがあるかを、下表で整理した。

3Dプリンタと既存の加工方法は、メリット・デメリットが相互補完的だ。射出成形・プレス成形・切削などの既存加工方法は、大量生産に適した技術である。一方で、試作やカスタマイズなどの少量生産では、3Dプリンタを用いれば金型がいらず、また構造の複雑さが工数へ影響を与えないなどリードタイムを含めてメリットが大きい。両者のメリットを活かし、単純形状部分を切削加工し、その上に複雑な形状を3Dプリントで付加したり、逆に3Dプリンタでの造形後に切削加工で仕上げを行ったりするなどの事例も見られる。

また、概要でも言及したように、3Dプリンタでしか作れない構造は、最終製品の独自価値につながる。このように量産での3Dプリンタの応用拡大には、重量や剛性・サイズなどの機能性やデザイン性の向上を顧客価値として訴求できるかがポイントとなるだろう。

3Dプリンタ及び既存加工方法のコスト要素とメリット・デメリット

出所:Uzabase作成

直接的な市場規模は既に100億ドル超、コスト削減が進めば導入拡大の可能性

3Dプリンタやその材料、ソフトウェアの市場規模については様々な調査が公開されている。Grand View Researchの調査によると、3Dプリンタの世界の市場規模は2022年時点で約167.5億ドルとされ、2023~30年にかけてCAGR20%以上の高い成長が期待されている。

今後の発展シナリオとして、2022年に世界経済フォーラム(WEF)が公表した「An Additive Manufacturing Breakthrough」では、今後5年間はカスタマイズ、単品などの少量生産、今後10年ではそれに加えて複雑な部品の連続生産やマス・カスタマイゼーションへの適用が有力視されている。一方で、直近5年の主な課題としてコスト削減、品質保証、デジタルプロセスチェーンを挙げている、特にコスト削減が進むことで、AMへの投資を成長や戦略実現に向けた先行投資から、費用対効果を見込むROI視点へ転換させる可能性があるとしている。

3Dプリンタの市場規模予測

出所:Grand View Researchの情報を基にUzabase作成

注:数値表記がない年はデータ非公表

機械売上は変動が大きく、安定していた累積的なサービス・素材の売上もコロナ禍で減少

上場企業であり、また専業トッププレイヤーでもあるStratasysと3D Systemsの業績を合算して見てみると、2014年度までは買収の寄与もあり継続的に成長を続けていたが、それ以降は伸び悩んでいる。サービスや素材などの非機械売上はその中でも横ばいから増加傾向を示していたが、2020-22年度はコロナ禍の影響やロシアのウクライナ侵攻などによる調達の遅れなどにより減少している。

Stratasysと3D Systemsの合算業績

出所:IR資料を基にUzabase作成

工作機械など、機械を作る機械は「マザーマシン」と言われるが、3Dプリンタもその一種といえる。最終製品の生産量が前年と変わらない場合は、機械導入をしなくても前年と同じ量を生産できる。そのため、増産量が前年より少ない場合には、どうしても機械の販売額は少なくなりがちであり、需要のボラティリティが大きいことが工作機械の受注動向からも窺える。一方で素材やサービスは生産量に連動するため、安定的に成長しやすい。

工作機械の内需・外需別受注額の推移

出所:日本工作機械工業会「工作機械受注統計」を基にUzabase作成

製造受託を行っている企業の動向を見ると、3Dプリンタの市場規模と同様の成長が窺える。下記のProto Labs(USA)という製造受託企業の業績の推移では、全社売上の変動に対し、3Dプリンタによる受託生産売上はコロナ禍においても増加を続けている。

Proto Labsの業績推移と内訳

出所:IR資料を基にUzabase作成

未来

製造業を中心に普及が進み、建設業界やフードテックにも波及

3Dプリンタは、どのような素材を用いることができる機械か、素材や受託製造などの消耗品・サービスも統合して提供しているか、特定領域に特化しているかなど、事業範囲が企業ごとに異なる。

黎明期から参入しているStratasysや3D Systemsは、買収も含めて複数の分野・事業を総合的に扱う一方、新規参入企業は特定領域に注力する傾向がある。また、伝統的企業が参入する場合には、GE(USA)のように買収で参入することもある。その他、BASF(Sculpteo(FRA)を買収)のようにCVC投資を組み合わせたりしている。直近では、2023年1月にニコンが産業用大型3D金属プリンタを強みとしているSLM Solutionsを買収した。

また、需要業界だけでなく、物流系企業が物流網を活かして受託製造形態で参入するケースがある。さらに、3Dプリンタに関わるサービスでは、製造受託だけでなく、プリンタを保有する企業と需要者のマッチングを行ったり、できた製品を販売するマーケットプレイスの運営など販売チャネルを提供したりする場合もある。

3Dプリンタ関連のバリューチェーン

出所:Uzabase作成

需要業界では、試作や模型製造に加え、特殊形状を製造可能な特徴を活かし、コストより機能性が優先されるロケット、航空機、スポーツカー、スポーツシューズのソール、金型など、少量生産の製品へと用途が広がっていた。近年は3Dプリンタ特有の構造や組成を活用して、高付加価値部品・構造の量産に用いる動きもある。

例として、切削加工ができない複雑な冷却構造を必要とする射出成形機の金型、試行錯誤や改善が求められる製造ラインの治具、ロボットの先端アームなどが挙げられる。1製品ごとに形状変更や改良を容易に行える特徴を活かし、医療業界では入歯や義肢などでも一部普及が進んでいる。直近では、Apple(USA)が製造に3Dプリンタを導入するという報道が出ており、新型Apple Watchのステンレススチール製ケースは3Dプリンタで製造される可能性がある。

また、土木建築業界では人手不足の解消や工期短縮に期待した導入検討が進められている。ただし、使用する素材がモルタルで異なることや、造形環境が屋外となるなど、本トレンドで紹介してきた金属や樹脂などを用いる3Dプリンタとは技術的に異なる要素が多いと想定される。

そのほか、食品業界では2023年9月にRevo Foodsが欧州において3Dプリンタで製造したビーガンサーモンの切り身を販売、IHIエアロスペースが食品3Dプリンタを宇宙ステーションでの調理器具としての利用を目指すなど、食品を3Dプリンタで製造する企業も増えている。また、培養肉の製造方法の1つとして検討が進められている(培養肉についてはトレンド「MeatTech」参照)。

3Dプリンタを活用している主な業界と活用事例

出所:Uzabase作成

航空・宇宙関連では、一体製造で軽量化・耐久性向上・部品点数削減

BtoB領域では、特に航空機関連での応用が始まっている。航空機は重量やスペースの制限、また求められる耐久性などから、単価が高くても採用されやすいと考えられる。

たとえば、GEはA320用エンジンの燃料ノズルを3Dプリンタで製造している。従来の加工方法では設計図通りに作ることが難しかったが、3Dプリンタで一体製造し、25%の軽量化と4~5倍の耐久性を実現した。またノズル以外にも活用し、部品点数の大幅な減少などにも寄与している。

宇宙領域ではRelativity Space(USA)が3Dプリンタを用いてロケットやエンジンの製造を行っている。3Dプリンタを用いることで、ロケットエンジンの部品は2,700個から3個まで減少した。同社は85%の部品が3Dプリンタで製造されたTerran 1というロケットを、2023年3月に初めて打ち上げた。軌道到達には至らなかったものの、ある程度の成果をあげたと報道されている。NASAやLockheed Martinとも契約をしており、期待の高さが窺える。2021年には、より大型で部品が再利用可能なロケットであるTerran Rの計画も発表されており、3Dプリンタの活用で製造がわずか60日で完成する見込みである。なお、Terran Rは2026年に打ち上げ予定である。

このように、高い品質・精度・耐久性を求められる領域でも活用が始まっている。

自動車分野でも開発コスト削減・軽量化・カスタマイズ・廃盤車の部品製造などで活躍

自動車向けでは、3Dプリンタを利用することで開発コストや開発期間の削減、部品の軽量化、カスタマイズ、廃盤車種の部品製造などへの活用が始まっている。

2010年代後半には、Mercedes-Benz Group(DEU)はEOS(DEU)とAEROTEC(DEU)と提携し、アルミニウムを素材とする3Dプリンタ製造システムを開発した。また、Volkswagen(DEU)はHP(USA)と提携し、自動車向け部品を量産している。既にキーやエンブレム、ギヤシフトノブ、ミラーマウントなどで利用を始め、長期的には構造部品などに用いて軽量化や耐衝撃性などの特性向上を目指している。さらに、BMW(DEU)はオープンカーのソフトトップの構造材に3Dプリンタ製部品を量産車で初採用した。そのほか、GM(USA)は3Dプリンタの活用でブレーキ部品の開発を9週間短縮・コストを60%削減するなどの取り組みを行っており、2020年には3Dプリンタ技術のさらなる研究開発のためにAdditive Industrialization Centerを開設した。

一方で、Porsche(DEU)は、Mahle(DEU)やTrumpf(DEU)の協力を得て、3Dプリンタによる部品の少量多品種製造を実施している。たとえば、古いモデルの修理用部品の一部を、2018年から3Dプリンタで製造している。同様に2021年に日産やトヨタも日本HP、SOLIZEと廃盤車種の部品製造を始めている。古いモデルや生産台数が少なかったモデルは、修理部品の在庫がなく、今となっては製造できないものもある。3Dプリンタを用いて金型を用いずに製造できれば、量産が終わった後も在庫や金型を保管するコストから解放され、必要に応じて都度生産することで対応できるため、長期的に見てコスト削減を図ることができる。

エンジン等の駆動系部品では、2021年にPorscheがエンジンピストンに3Dプリンタを採用し耐久性テストを完了したと発表したが、同社では現在の3Dプリンタはコストがかかるため少量で必要な部品に適用し、大規模生産には適していないとしている。

なお、3Dプリンタを利用した世界最速のスーパーカーを開発したDivergent(USA)は、AIベースの設計×3Dプリンティング×完全自動のロボット組み立てを組み合わせたプラットフォームを自動車メーカーに提供している。これにより、自動車の開発コスト削減や軽量化などを図ることが可能である。

中国の市場規模は2022年に約50億ドル、航空宇宙、医療分野などで活用が進む

中商産業研究院によると、中国3Dプリンタ市場は2019-22年のCAGR28.0%で330億元(約50億ドル)となり、2023年には400億元(約60億ドル)以上になると予測されている。活用業界は、航空・宇宙(16.8%)、医療(15.6%)、自動車(14.6%)、消費者用電子機器(11.8%)となっているが、その活用度合いには違いがみられる。

工業情報化部が2022年に「積層造形の代表的な応用シーン」について36の事例を初めて公表した。それによると、中国では積層造形設備は複合構造品の一体化製造、専用モジュールの製造、部品の修理と再製造、医療用インプラントや矯正装置のカスタマイズ、治療用補助器具の製造といったシーンでの応用が比較的集中している。

具体的な企業でみると、民間旅客機や航空宇宙エンジン、ドローン、人工衛星などの航空・宇宙機器のコア部品の一体化製造プロジェクトにおいて、Xi’an Bright Laser Technologies(西安鉑力特增材技術)、Tianjin LiM Laser Technology(天津鐳明激光科技)などの企業の3Dプリンタが用いられている。建設機械用タービンや、油圧マルチウェイバルブ、自動車エンジン用シリンダーヘッドなどの工業分野に関しては、XCMG Research Institute(江蘇徐工工程機械研究院)、Shanghai Hanbang United 3D Tech(上海漢邦聯航激光科技)などの3Dプリンタが専用モジュールの製造に使われている。

また、医療分野に関しては、Guangzhou laseradd Technology(広州雷佳增材科技)の設備がコバルト・クロム・モリブデン製整形外科用インプラント、Farsoon Technologies(湖南華曙高科技)の設備がチタン合金製整形外科用インプラント、Medprin Regenerative(広州邁普再生医学科技)の設備が生分解性軟組織修復用インプラントのカスタマイズ製造をそれぞれ実現している。

Shenzhen Zhixin New Information Technology (深圳市智信新信息技术)のブランドであるHONORは、2023年7月に新たに発表された折りたたみスマートフォンに、3Dプリンタを使用したチタン合金素材を採用した。また、前述の通りAppleも3Dプリント技術の導入を検討しており、3Dプリンタは電子製品においても活用が進む可能性がある。

成熟していく過程では、販路の確保のための買収やクロスライセンスなどが起こりうる

成長期にある3Dプリンタに対して、既に成熟化した業界のなかではコピー機(プリンタ・複合機)業界は類似点を多く持ち、3Dプリンタの未来への示唆があると考えられる。

まず類似点としては、ハード+消耗品・サービスというビジネスモデルを志向する企業が多い点、黎明期は特許に守られていた点が挙げられる。コピー機業界は成熟する過程で、ハードの機能差が少なくなり、販売力の重要度が上がったため、販社の買収が行われてきた。販社は日常的なメンテナンスを行うため、顧客接点を得られ、コピー機や関連商品の販売などにつなげられる。加えて特許についても、成熟化の過程でクロスライセンスが進んだ。結果として、既に参入した大手間での特許問題はなくなった一方、新規参入への障壁としては依然一定の効果がある。

また成熟してからは、機器や消耗品の販売ではなく、顧客先で印刷業務自体を受託するMPS(Managed Print Service)という方式が増えた。3Dプリンタにおいても、顧客が欲しいのは成果物で、機械はそのための手段でしかない。そのなかで最終成果物や稼働率の保証といったビジネスモデルでの展開が広がる可能性もある。

一方で、消耗品は安定的に収益を期待できるため、安価なサードパーティー消耗品が登場してきた歴史がある。3Dプリンタでも、品質差や保証などで一定対応をできる部分もあると考えられるが、普及しコストがより重要になった段階では、サードパーティー消耗品にどう対応するかはリスクとして挙げられる。

青山 武史

青山 武史

グロービス経営大学院大学でMBAを取得し、キャリアを一貫してクリエイティブ、テクノロジー、ビジネスを高度に融合させた新規事業開発やイノベーションの創出を主導して来た。スタートアップ(最高事業責任者)や事業会社(マーケティング最高責任者)等でマーケティングからサービス開発までの新規事業開発の経験を積み、多くの事業で収益規模を拡大し、大手企業とのアライアンスに携わった。現在はYKK APにて新規事業開発部担当部長として、再生エネルギー事業の推進と新規領域の探索を担当。Point0を通して大手企業と共創活動を推進。渋谷未来デザインとSWiTCHとのカーボンニュートラルプロジェクト「CNUD」に参画。個人としても大手エネルギー企業のヘルスケ領域の新規事業開発支援コンサルティング実績多数。

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