最新の記事はこちらから

自動運転

文章最終更新日:2023年12月13日

トレンド概要

技術的進化と参入活性化で、自動運転レベル3以上の実用化に向けた投資・研究が加速

自動運転システムは、機械やシステムで人の運転を支援・代替する技術・システムの総称である。ドライバーの負担を軽減するだけでなく、交通事故の減少や渋滞の緩和など現在の交通インフラ全体が抱える課題の解消や、将来的にはバスやタクシーなどの公共交通や物流業界などの労働力不足への対応においても効果が期待されている(トラックの自動運転についてはトレンド「自動運転トラック」を参照)。

自動車の運転には、信号に従った運転に加えて、周囲を走る車の割り込み、通行人の飛び出しの対応など、認知・判断・操作が求められる。これまで自動運転の研究が長く続けられてきたが、この認知・判断・操作に対応する技術が発達していなかったため、高速道路での車間距離維持や道路に沿っての巡航など運転補助のレベルに留まり、大部分の操作は人間が行う必要があった。しかし、ここ10年で様々なセンシング技術が進化し、大量のデータが取得可能となった。さらに、コンピュータによる計算能力の向上や機械学習の進化なども追い風となっている。また、IT・情報通信や電子機器・部品メーカーなど異業種からの参入が相次いでおり、研究開発を加速させる要因となっている。

ただし、自動運転の普及に向けては、法改正も課題となっている。各国の法規制において、走行可能なエリア制限やドライバーの監視義務などの条件付きとなるレベル3以上の車両の公道走行が許可されつつある。ドイツでは2022年、世界で初めてレベル4の公道走行が一部解禁されたほか、2023年4月には日本でもレベル4の公道走行が一部解禁された。

本トレンドでは、急速に進化し社会実装が近づく自動運転レベル3以上の動向について、センシング技術・規制・提携関係を中心に、自動車や自動車部品などの関連業界をはじめ、社会全体に及ぶ影響を概観する。

なお、自動運転が先進国で一般的になるタイミングについてエキスパートに窺っており、「【自動車】インフレ下での収益性や、EVシフトの注目企業は?(2023年1月)」も併せてご参照いただきたい。

自動運転の研究開発が加速度的に成長した背景

出所:Uzabase作成

レベル3以上では運転の主体がシステムに、市販車への導入も進む

自動運転は、人間、およびシステムがどこまで操作を担うかを「レベル」で表現する。レベル2までは人間が主体の運転支援であり、人間が常にハンドルを握り、運転状況を主導することが求められる。一方、レベル3以上では自動運転システムが運転の大部分を担う。レベル3では、高速道路や指定された走行レーンなど走行可能なエリアが限定されているほか、人間がいつでも運転を代われる状況を維持する必要があるものの、基本的に人間の運転は自動運転システムが要請をしたときのみと想定されている。レベル4では、レベル3と同様に走行可能エリアの制限があるものの、人間による監視義務はなくなる。

そのため、レベル3以上においては、主に車両の性能によって事故が発生しない安全性を担保することと、万が一事故が発生した場合に誰がどういう状況において責任主体になるかといった判断基準の整備が規制とあわせて重要になる。ただし、レベル3では、人間がいつでも運転を代われる程度に運転状況に関与することが求められるため、レベル2と比較して人間の負荷軽減の度合いはあまり大きくない。そのため、トヨタ自動車やVolvo Cars(SWE)ように、自動車メーカーによってはレベル3を飛ばしてレベル4を目指す動きもある。

なお、レベル3はAudi(DEU)や本田技研工業がいち早く一般向け販売を開始した。本田技研工業は、2021年に100台の限定リース販売で世界初のレベル3搭載の市販車を販売した。また、Mercedes-Benz(DEU)は2022年5月、一部車種の追加オプションとしてレベル3の搭載を開始、BMW(DEU)も2024年3月からレベル3搭載の7シリーズ発売を予定している。さらにレベル4でも、自動運転タクシーの分野で徐々に導入が進んでいる。展開地域は限定されているものの、Alphabet(USA)傘下のWaymo(USA)がサービスを開始・拡大しているほか、多くの企業が試験走行を始めている。

自動運転・運転支援のレベル

出所:Volkswagenの資料を基にUzabase作成

運転における認知・判断・操作の代替には、データの取得や処理の精度、即時性などが重要

自動運転は、人間が行う認知・判断・操作を、複数の技術を組み合わせて代替する。

認知については、大きくは位置認識と外部環境認識に分けられる。位置認識は、地図データやGPSなど衛星システムを用いて行う。地図データには、車線や標識など紙媒体と同様のデータに加え、3次元地図データ(HDマップ)が用いられる。それらを車両のセンサで取得したデータと組み合わせることで、正確な位置を認識できる。

安全な運転を行うためには、様々なセンサで多角的にデータを取得し、そのデータを合成・処理することで、即時かつ正確に外部環境を認識し、それに基づく適切な判断を行うことが必要となる。たとえば、地図データと実際の情報に差異がある場合など、現実の情報を優先して処理しなければならないこともある。これらの実現においては、半導体の処理能力や機械学習アルゴリズムが重要である。

このような判断のプロセスを経て、自動運転システムが実際の操作を行う。

認知・判断・操作と関連する技術要素

出所:Uzabase作成

そのほか、晴天の日中だけでなく、雨や雪、霧など様々な気象条件や、夜間への対応も求められる。

自動運転で用いられるセンサには長所・短所があるため、特徴の異なる複数のセンサを搭載することで、外部環境のより正確な認識を可能としている。ただし、雪などでそもそも画像認識が困難となるなど、センサとしての限界もある。たとえば、本田技研工業が2021年に発売した「レジェンド」でも、強い雨や雪のなかでは正常に動作しないとされている。そのため、信号や道路から電波を発信させるなど、インフラ側での対応も検討されている(自動車の情報領域の変化についてはトレンド「コネクテッドカー」を参照)。

自動運転の外部環境認識に用いられる主なセンサとその特性

出所:各種資料を基にUzabase作成

各国でレベル3以上の公道走行の認可に向けた議論が加速、ドイツ・日本ではレベル4も認可

自動運転の研究開発は、米欧中日を中心に進められており、各国で法規制や支援策の整備が進められている。現在は、レベル3の一般道での実用化に向けた義務事項・責任範囲の整備や、レベル4対応の時期などが主な論点となっている。

世界共通での基準整備については、国連の自動車基準調和フォーラム(WP29)で、2020年に自動車の自動運行装置(レベル3)に関する国際基準(UN-R157)が成立した。2021年の改正では高速道路での上限速度を130km/h以下に緩和し、乗用車の車線変更も可能となった。これら基準に関連して、同年にMercedes-Benzがドイツ連邦自動車局から型式認証を受けるなど、各社の対応が進んだ。

レベル4については、ドイツで2022年にレベル4の公道走行を認める政令が承認されたほか、日本でも2023年4月にレベル4の走行許可を含めた改正道路交通法が施行された(運行者の遠隔監視などの条件を満たし許可を得た特定エリア内のみ)。その他の国でも、レベル3以上の普及を後押しする政策の議論が進められている。

中国でも2022年に、安全性を最優先とした上で、交通量が少なくコントロールしやすい状況においては自動運転車のタクシー利用を推奨する方針を示している。ただし、本件に先立つ2021年、政府がデータ安全法に基づき、中国国内で収集した自動車の走行データや車載カメラの情報などの国外への持ち出しを規制する方針が発表された。場合により、国外での活動も法的責任の追及対象となるため、自動運転に取り組む中国企業や中国展開を行う外国企業にとっては、規制対策に伴う開発遅延やコスト増などが生じる可能性がある。

米欧中日における自動運転普及に向けた動き

出所:内閣官房IT総合戦略室「ITS・自動運転を巡る最近の動向」(2016年春以降の動き)」などを基にUzabase作成

公道上の実走行における安全担保などについては依然課題も大きい。2023年10月にはGeneral Motors傘下のCruise(USA)の自動運転タクシーで人身事故が発生するなどトラブルが続いており、米カリフォルニア州で運行停止命令を受け、Cruiseは車両をリコールしたほか米国内の自動運転タクシー運行を停止した。普及にあたっては、公道走行でのリスク管理や社会的な反応も含めてメーカーの対応が必要となっている。

マネタイズ

自動運転車の普及にはさらなるコストダウンが必要

レベル3の自動運転に相当する機能は、現在は上位モデルでの採用が中心である。すでに販売されているAudi A8やホンダ レジェンド(2022年1月販売終了)の車両価格は、いずれも10万ドル前後となっている。

高価格の背景には、レベル3の自動運転には様々なセンサや半導体の搭載が必要なこと、まだ量産が本格化しておらずコストダウンが十分でないことなどがある。前述のAudi A8(2018年モデル)では、カメラ6個、ミリ波レーダー5個、LiDAR1個、超音波センサ12個を搭載している。また、Cruiseの車両(2019年8月現在)には、カメラ16個、ミリ波レーダー21個、LiDAR5個が搭載されている。2021年3月発売の本田技研工業のレジェンドでも、フロントセンサカメラ2個、レーダーセンサ5個、ソナーセンサ12個、LiDAR5個が搭載されている。

車両価格の抑制に向けては、各種部品のコストダウンが欠かせない。カメラ・センサ類のなかで特に高価と言われているのはLiDARである。従来は単価数千から数万ドルとされていたが、近年はLiDARのコストも下がってきている。特に回転機構がないMEMS方式などの研究開発がすすめられ、精度は劣るものの1個100~1,000ドルほどの価格が見えてきている。また、中国ではHesai Technology(CHN)が販売を開始しているほか、Livox Technology(CHN)などのベンチャー企業がLiDARの量産を目指しており、Huawei(CHN)などの大手企業もLiDAR市場に進出、低価格で高性能のLiDAR供給が期待されている。

なお、調査会社Yole Développementによれば、LiDARの市場規模は2022-28年のCAGR55%で成長し、2028年時点で45億米ドルに達すると予測している。

Audi A8

GMクルーズの自動運転車両

車両の稼働率の適正化により収益化も見込めるが、市場成長には保有も含めた個人需要の獲得も重要

コストの吸収には、車両の稼働率を上げるアプローチも考えられる。特に配車サービス(詳細は「配車サービス業界」を参照)では、ドライバーの社会保障などが課題となっているが、自動運転が実現できれば、人件費はかからず雇用も論点とならない。

一方、多くのドライバーが配車サービスを担っていることで、稼働する車両全体に占める乗車比率に余剰が生じ、ユーザーが乗りたいときにすぐ配車されるという利便性にもつながる。自動運転車だけの運用、かつ車両あたりの乗車率100%を目指せば、利便性が損なわれユーザーは離れるだろう。そのため、現実的には、全体で適度な稼働率を維持する、もしくは自動運転車の乗車率を高めながらドライバーと併用するような運用になっていくと考えられる。

米国ライドシェア市場において、自社の配車サービスを一部自動運転車で代替する場合の需要台数シミュレーションを行った。Uber Technologies(USA)とLyft(USA)の2020年の売上高に基づくと、配車サービスの年間市場規模は約500億ドルとなる。その60%を自動運転車に置き換えると仮定する。なお、Goldman Sachs(USA)の調査によると、乗客が支払った金額のうち、約半分がドライバーに支払われる金額とされており、最大のコスト要素となっている。

下記のシミュレーションの前提であれば、1台あたりの年間売上が4万ドルを超えると、あとは限界利益として収益性改善に寄与する。

配車サービス企業は、十分な台あたり売上を確保できる地域に自動運転車を優先的に導入しながら、足りない部分はドライバーを活用する戦略を採ることで、利益を最大化することができる。

ただし、想定される市場規模はそれほど大きくない。シミュレーションの5年償却を前提とすると、配車サービスの年間需要台数は15万台となる。

自動車の全需を考慮すると、経済合理性が重視される配車サービスだけでなく、個人保有などの需要が広がらなければ、自動運転車の比率はわずかにとどまる。実際、2020年12月にはAurora Innovation(USA)がUber Technologiesの自動運転部門を買収、2021年7月にはトヨタ自動車も傘下のウーブン・バイ・トヨタを通じてLyftの自動運転部門を買収するなど、業界内での統廃合、および自動運転以外も含む自動車事業への取り込みがみられる。

米国配車サービス事業を自動運転化したシミュレーション

出所:Uzabase作成

未来

自動車や自動車部品業界の再編と並行して、様々な提携関係が結ばれている

自動運転の開発を巡って様々な提携関係が結ばれている。また、自動運転やEVを見据えて、自動車メーカーや自動車部品メーカーの再編も並行して進んでおり、提携関係が複雑になっている。

大まかに見ると、自動運転システムを軸に提携関係が結ばれることが多い。たとえば、General MotorsはCruiseを買収、トヨタ自動車は子会社に加えて中国スタートアップのPony.ai(CHN)やティアフォーへの出資、Lyftの自動運転部門の買収などを行っている。中国では、SAIC Motor(CHN)、Dongfeng Automobile(CHN)、Chery Automobile(CHN)の三社がAutoX(CHN)に投資、BYD(CHN)も同社と戦略提携している。また、AutoXは中国メーカー以外にも、Ford Motor(USA)などとも提携している。一方、Ford MotorとVolkswagen(DEU)が出資していたArgo.ai(USA)は、2022年に解散し事実上両社に吸収合併された。2023年3月にFord MotorはArgo.aiの技術者等を引き継いだ子会社Latitude AI(USA)を設立した一方、VolkswagenはMobileye(ISR)との連携を進める。

中国検索エンジン大手のBaidu(CHN)は、2017年に自社開発した自動運転向けプラットフォーム「Apollo」プロジェクトを開始した。中国の主要自動車メーカーや、BMW、Ford、トヨタ自動車、本田技研工業などに加え、複数のIT企業と提携している。

また、NVIDIA(USA)は、自動運転のデータ処理や機械学習に用いられる半導体に加え、「NVIDIA DRIVE」というプラットフォームで機械学習やシミュレーションツールも提供している。2020年には、中国の新興メーカーXpeng Motors(CHN)が「NVIDIA DRIVE AGX Xavier」を搭載した初の自動運転車「P7」を発表した。Mercedez-Benzとはこの「NVIDIA DRIVE」をベースとした自動運転機能の開発を進めており、最も広い提携関係を持っている。2021年は、Volvo CarsやSAIC Motorなど、2022年にはBYDなども採用を発表した。

そのほか、2019年には、完全自動運転車の早期実用化を目的としたAutonomous Vehicle Computing Consotium (AVCC)が発足した。自動車メーカーではトヨタ自動車、GM、半導体メーカーではNVIDIA、Arm(GBR)、NXP Semiconductors(NLD)、自動車部品Tier1ではBosch(DEU)、Continental(DEU)、デンソーなどが参加している。

自動運転をめぐる主要な提携関係

出所:各社ニュースリリース等を基にUzabase作成

注:特に代表的なものを記載

注:BMWとMercedes-Benzは自動運転技術の共同開発を行っていたが2020年6月に中止

各社ともレベル4の商用化に向けた開発・試験走行を加速

最近では各社ともレベル4に向けて動き始めている。

Alphabet傘下のWaymoは、2018年より米国アリゾナ州フェニックスで有料自動運転タクシーサービス「Waymo One」を開始し、徐々に運用地域を拡大している。同社は、2019年から同地域のハイウェイにおいて自動運転トラックの試験走行も開始しており、物流分野でも自動運転に対する期待が高まっている。更に、2023年中に同地域でUber Technologiesと提携し、同社のサービスに対して自動運転車の提供を行うことを予定している。

Cruiseは、シェアリングサービス用の自動運転対応電気自動車「Cruise Origin」を社員向けライドシェアサービスに投入している。2021年にはMicrosoft(USA)と技術提携を結び、バックエンドの強化を図った。さらに同年9月からは、本田技研工業とともにレベル4の車両によるモビリティサービスの技術実証を開始した。

中国では、Baiduが長沙市で共同開発した「紅旗EV」を活用し、自動運転タクシーの試験サービス「Apollo Go」を開始した。Pony.ai、AutoX、WeRide(CHN)などの企業も自動運転タクシーの試験サービスを中国や米国などの主要都市で行っている。ただし、Pony.aiは2021年に米国カリフォルニア州で無人車の衝突事故があり公道走行テストを停止、2022年には同州での試験許可を取り消されている。

Waymo oneで用いられている車両

機密情報を巡る争いや、買収による人材・技術力の強化が活発化

自動運転の開発を手がける企業にとって、当該分野の情報は機密性・希少性が非常に高い。過去には機密情報を巡る争いも複数件発生している。

Waymoで研究開発を行っていたAnthony Levandowski氏は、自動運転トラックのスタートアップOtto(USA)を2016年に創業、同年8月にUber Technologiesに買収された。しかし、2017年に機密情報を盗んだとしてWaymoが訴えを起こし、Levandowski氏は解雇、2018年にUberは和解金としてシリーズG増資の0.34%を株式配当として提供した(約2.45億ドル相当)。また、Levandowski氏本人も、Alphabetに1.79億ドルを支払うよう2020年に裁判所命令を受け、自己破産を申請している。

各社の買収・採用には、事業規模の拡大・加速にとどまらず、希少価値の高さも含めた人材・技術力の獲得を図る意図もあると考えられる。Appleは、2019年に自動運転システムのスタートアップDrive.ai(USA)を買収した。Waymoは、自動運転車の模倣学習を行うシステムを開発した、オックスフォード大学発のスタートアップLatent Logic(GBR)を買収した。

青山 武史

青山 武史

グロービス経営大学院大学でMBAを取得し、キャリアを一貫してクリエイティブ、テクノロジー、ビジネスを高度に融合させた新規事業開発やイノベーションの創出を主導して来た。スタートアップ(最高事業責任者)や事業会社(マーケティング最高責任者)等でマーケティングからサービス開発までの新規事業開発の経験を積み、多くの事業で収益規模を拡大し、大手企業とのアライアンスに携わった。現在はYKK APにて新規事業開発部担当部長として、再生エネルギー事業の推進と新規領域の探索を担当。Point0を通して大手企業と共創活動を推進。渋谷未来デザインとSWiTCHとのカーボンニュートラルプロジェクト「CNUD」に参画。個人としても大手エネルギー企業のヘルスケ領域の新規事業開発支援コンサルティング実績多数。

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


関連記事