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チャットボット

文章最終更新日:2024年01月24日

トレンド概要

チャットボットは広範な顧客対応を自動化

チャットボットは、自然言語で人間と対話する自動ソフトウェアで、人間が行ってきた顧客対応の一部を代替する。主な分類としてシナリオ型とAI型がある。

シナリオ型はあらかじめ想定された問合せなど入力情報に対して、事前に設定したシナリオに基づいて応答する。一方、AI型は、自然言語処理(NLP)技術により、問合せ内容を把握して回答を行う。今後は、ChatGPTに代表される生成AIの導入で、AI型はより自然な対話と幅広いケースへの適用が期待されている。

本トレンドでは、主にAI型チャットボットを扱う(生成AIについてはトレンド「テキスト生成AI」参照)。

チャットボットの分類と特徴

出所:Uzabase作成

年中無休24時間の素早い問合せ対応ニーズの増加が背景

チャットボットが必要とされる背景には、特にB2C領域においてオンライン化(EC、オンラインサービスなど)が進んだことが挙げられ、この傾向はコロナ禍を契機に加速した。

顧客は問合せに対して素早い初期応答を求めている。例えば、コールセンターの平均応答速度(ASA)は数十秒以内とされる。また、チャット応答ではLiveChatの「Interactive Customer Service Report」(同社顧客データを分析)によると、初期応答時間が長くなるほど顧客満足度は低下する傾向にある。上記に加え、オンライン化により、世界中からいつでも購入やサービス提供が可能となったことで、年中無休24時間の問合せ対応が求められるようになった。

これに人手で対応することは効率性やコスト面で困難であり、単純な内容の問合せを大量に素早く処理でき、大幅なコスト削減が見込めるチャットボットのニーズが高まっている。Drift and Heinz Marketingの調査(2021年)によると、「質問や苦情に対し迅速かつ細やかな対応を受けられること」が顧客の間でチャットボットの利用が広がっている主因であり、このことが需要増につながっている。

また、コロナ禍では、チャットボットの24時間体制で大量の問合せに答えることができるという特徴が、公的機関からの正確な情報発信やワクチン接種推奨に関する個別の情報提供に役立った。WHOや米国疾病予防管理センター(CDC)も情報提供のためにウェブサイトにチャットボットを組み込んでいる。

初期応答時間と満足と回答した割合

出所:LiveChat「Interactive Customer Service Report」をもとにUzabase作成

ユーザー体験の向上につながるチャットボットの利点(2021年)

出所:Drift and Heinz Marketing

注:同調査は、チャットボットのユーザーが「ユーザー体験向上」のために重要と考える要素の特定を目的としている

自然言語処理技術の進歩、導入にかかる手間とコストの低減が、チャットボット導入を加速

自然言語処理と機械学習の進歩は、大量のデータを選別して最適な応答を行うことや文脈と意味を理解することに貢献した。また、機械学習の応用により、顧客問合せに対する過去の成功と失敗事例の学習からも応答精度が大幅に改善されてきた。2016年にIBM(USA)のWatsonが登場したことをはじめ、Google AssistantやSiriなどのさまざまなプラットフォームのアシスタント機能が登場し、顧客が求めることを理解・対応する能力が向上してきている。

チャットボットが、コミュニケーションツールとして好まれるようになり、導入が容易なチャットボットが急増していることも、利用が拡大している要因といえる。Drift and Heinz Marketing(2020年)によると、ブランドコミュニケーションチャネルとしてのチャットボットの利用は、2019-20年にかけて92%増加した。企業の顧客サービスにおいてメッセージサービス・チャットアプリの利用が増える中で、チャットボットは今、自動応答の方法として広く受け入れられつつある。また、Gartnerが2022年初期に実施した調査によると、回答者の54%が顧客向けアプリにチャットボット、バーチャルエージェントなどの会話型AIプラットフォームを利用していることが分かった。

Meta (USA)や他のチャットボット提供企業は、この流れに乗り導入が容易なチャットボットを開発するプラットフォームを提供し、企業が自社のウェブサイトや自社アカウントにチャットボットを1日で実装できるようにしている。特にFacebook Messengerの成功が目覚ましく、2016年にサービスを導入して以来、2019年時点で約30万を超えるチャットボットが稼働している。これにより、ユーザーは異なるウェブサイトへログインしたり、アプリのダウンロード、サービスセンターへの問合せや店舗を訪問したりせずとも、1つのアプリでカスタマーサービスに問合せが可能になった。

チャットボットは個人情報保護、AI関連規制の影響を受ける

チャットボットは、主に個人情報保護に関する規制の影響を受け、さらにAI型チャットボットはAI関連規制の影響も受ける。

チャットボットはユーザーがいつ・何を求めるかを予測するためデータを蓄積している。このデータには住所、好み、閲覧履歴などの個人情報を含むため、不具合が生じれば個人情報がリスクにさらされる恐れがある。2018年に施行されたEUのGDPR(一般データ保護規則)には、利用者データの取り扱いなどに関して、ユーザーの明示的同意や厳格な処理要件など、チャットボットに対する規制が盛り込まれている。またGDPR第22条は、融資の承認や補償、罰金など、利用者に法的または同様の重大な影響を与える選択に、AIを唯一の意思決定者として利用することはできないと定めている。中国のガイドラインはGDPRと比較して緩やかであるが、米国のガイドラインよりも厳格といえる。日本も厳格化の流れに沿っているものの、規制は緩やかである。

さらにAI型チャットボットは、AI関連規制の影響も受ける。欧州では、2023年12月に「Artificial Intelligence Act(AI規則案)」が暫定合意された。AIを規制する世界初の包括的な法的枠組みであり、AIがもたらすリスクを4段階で評価し、それぞれに求められる対応や罰則が規定されている。具体的な影響は今後注視する必要があるだろう。(規制案の時点での詳細はオリジナルレポート「ChatGPT規制、今見るべきポイント(2023年7月)」参照)。

個人情報保護に関する主な規制

出所:California Legislative Information、Aruba Networks、Protivitiを基にUzabase作成

 

 

マネタイズ

チャットボット市場は2023-28にCAGR23%で成長、生成AIの登場が後押し

市場調査会社Markets and Marketsによれば、世界のチャットボット市場は2022年の47億ドル規模から、2023-28年にかけて年平均成長率(CAGR)23%で成長し、155億ドルに達すると見込まれている。この成長は、ChatGPTなどの生成AIの登場により、問合せ内容をより理解して自然に応答することや、ユーザーごとの好みやニーズに合わせた対応も可能となったことが後押しするとされる。地域別では、2023-28年にかけて北米が最大市場となるとみられる。

世界のチャットボット市場規模

出所:Markets and MarketsをもとにUzabase作成

初歩的な問合せ対応の自動化によるコスト削減が、チャットボット利用の最大効果

ユーザーからの問合せの大半は以下のような初歩的な問合せである。量が多く即応が求められるが、単純な内容であるためチャットボットでの対応が適している。

1. 明確に定義された処理領域(請求書の支払いや口座残高の照会など)

2. 明確な段階を踏む処理や値の入力作業(行先、渡航日時の決まった航空券予約)

3. 一般的に多くの問合せ事例が存在する処理

4. 顧客への負荷や影響の少ない処理(多額の銀行取引ではなく、請求書の支払いなど)

チャットボットの導入がユーザー満足度や売上の向上につながるというメリットもあるが、短期的にはコスト削減効果のほうが大きい。

チャットボットは、主にカスタマーサービス対応に使用されている。Business Insiderが2016年に実施した調査によると、チャットボットの導入は人件費削減につながり、カスタマーサービス職では導入前と比べて29%、営業職では35%、証券・商品・金融サービス職では47%、保険営業職では60%、従業員の年間給与を削減できるという(2017年、入手可能な最新データ)。

IBMなどのテクノロジー企業は、3DデザインサービスのAutodesk向けに提供したカスタマーサービスチャットボットAvaなどの使用例で潜在的なコスト削減幅について検証した。この結果、人が対応した場合に問い合わせ1件あたり15~200ドルだったコストが、チャットボットでは1ドルに低下した。

チャットボットにかかるコストとメリット

出所:Uzabase作成

未来

既存の開発ツールとプラットフォームが利用でき、銀行から医療まで利用業界が拡大

チャットボットはゼロから開発する場合と、ボット開発フレームワークや展開プラットフォームを使って開発する場合がある。後者は開発フレームワークやツール、およびボット開発プラットフォームが予め用意されており、ユーザーフレンドリーといえる。外部の自然言語処理ツールもこれらのプラットフォームに使用されており、社内のIT担当チームや、Accenture(IRL)、Deloitte(USA)など外部のサービス提供業者が必要なチャットボットを開発する。これらのチャットボットは、その後メッセージングや企業のウェブサイト、モバイルアプリなど、特定のプラットフォーム上に設定される。

このような状況を背景に、ニッチ製品を提供するプレイヤーも市場に参入している。Chatfuel(USA)やBotsify(PAK)、ManyChat(USA)などの開発プラットフォームが大手プレイヤーとなっている。これらは使いやすく、コーディング知識があまりなくても、Facebookなどのプラットフォームに展開できることが利点である。Microsoft、Alphabet(Google)、IBMなどの大手テクノロジー企業も、それぞれMicrosoft Bot Framework、Dialogflow、Watsonを通じて、同分野での存在感を示している。

チャットボットに関わるバリューチェーン

出所:Uzabase作成

小売、金融サービス、医療、レジャーなどの業界では、顧客サービス費用を削減するために、チャットボットを活用または試用している。

金融サービス業界の例では、Yes Bankは、チャットアプリ「Yes Robot」から60以上の銀行サービスを提供している。医療業界では、Healthilyは医療分野のチャットボットアプリで、信頼できる情報に基づく医療の助言や推薦を提供する。Senselyの仮想アシスタント「Molly」は、ユーザーが入力した文章や画像、映像、音声を大量のデータと照合・分析し、ユーザーの症状に基づいた診断を提供するために設計された。レジャー業界ではチャットボットが一般的に活用され、ユーザーによるオンライン予約、旅程作成のサポート、苦情の処理などを行っている。たとえば、Hotelwayはホスピタリティ業界に特化したチャットボットを提供している。同社のチャットボットは、宿泊客とのコミュニケーションを強化することでエンゲージメントを高め、ホテルの売上高成長に寄与するという。また、IBM Watson上に構築されたJulieは、鉄道輸送会社Amtrak(USA)が提供する仮想の顧客アシスタントである。Amtrakは、2019年時点で年間3,000万人の顧客が利用し、Amtrak.comのウェブサイトは1日あたり37万5,000人の顧客に対応している。Julieは、顧客がウェブサイトを利用し、希望する目的地への乗車券を予約するためのリンクや、Amtrak旅行関連の問合せをサポートする。

ChatGPTとGoogle Bardがチューリングテストに合格、対話型AI発展のマイルストーンに

チャットボット分野では、2022年11月にOpenAI(USA)がChatGPTを、2023年3月にAlphabet(Google)がBardを発表した。ChatGPTは機械学習を用いて対話形式で質問に答えるAI搭載チャットボットであり、テキストで幅広い質問に答えるだけではなく、オリジナルコンテンツを作成することもできる。Google BardもAI搭載チャットボットであるが、インターネットから回答を引き出し、自然言語処理と機械学習によって人間の会話を模倣する。Googleの次世代言語モード「Pathways Language Model(PaLM)」が使用されている。

長年の改善努力にもかかわらず、これまでほとんどのチャットボットがチューリングテスト合格を果たせずにいた。チューリングテストとは、判定者がチャットボットと人間の両方と対話し、2者を区別できるかを調査するものであり、区別がつかなかったボットが合格判定を受ける。ChatGPTとGoogle Bardは同テストに合格するという快挙を果たし、AIが人間を模した会話ができることを証明した。このような進歩により、チャットボットは将来的に複雑な会話を理解したり、人間らしい応答をしたりするようになると期待される(生成AIについては、トレンド「テキスト生成AI」参照)。

青山 武史

青山 武史

グロービス経営大学院大学でMBAを取得し、キャリアを一貫してクリエイティブ、テクノロジー、ビジネスを高度に融合させた新規事業開発やイノベーションの創出を主導して来た。スタートアップ(最高事業責任者)や事業会社(マーケティング最高責任者)等でマーケティングからサービス開発までの新規事業開発の経験を積み、多くの事業で収益規模を拡大し、大手企業とのアライアンスに携わった。現在はYKK APにて新規事業開発部担当部長として、再生エネルギー事業の推進と新規領域の探索を担当。Point0を通して大手企業と共創活動を推進。渋谷未来デザインとSWiTCHとのカーボンニュートラルプロジェクト「CNUD」に参画。個人としても大手エネルギー企業のヘルスケ領域の新規事業開発支援コンサルティング実績多数。

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