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外国人労働者(日本)

文章最終更新日:2024年02月09日

トレンド概要

コロナ禍で外国人労働者の増加ペースは鈍化も、労働力供給不足への対応が必要

本トレンドでは、日本で働く外国人労働者(留学生のアルバイトを含む)の増加の背景と、増加に伴うビジネスの変化について扱う。

日本では、少子・高齢化による労働供給不足への対応が、政府や事業者にとって重要な課題となっている。長期的には労働政策やイノベーションにより国全体の生産性を上昇させることが望ましい。一方、短期的には女性の社会進出やシニア世代の再雇用だけでは追いつかないため、段階的な対応として、外国人労働者の取り込みが必要である。

日本は就労ビザの取得が相対的に難しいとされるものの、これまでも外国人労働者は少しずつ増えてきた。コロナ禍では新規のビザ発給の停止による事実上の入国停止などの措置が取られたため、外国人労働者の増加ペースの鈍化が顕著だったが、2022年11月に新規入国者を対象とするビザ発給が再開され、2023年4月には水際対策も終了した。これにより、日本で働く外国人は2023年10月末時点で初めて200万人を超え、2014年比で約2.6倍以上に増加した 。

政府は外国人労働者の受け入れに引き続き積極的である。たとえば、成長戦略として外国人材の活躍推進を位置づけるほか、就業や受入支援のみならず生活面での支援も国の施策として推進している。また、留学生の就職先に関するガイドラインの改定が予定されているほか、IT人材の受入について在留資格の周知を図っている。

省庁による在留外国人向けの職業マッチング支援も行われている。外国人を雇用する事業所は2023年に約32万か所あり、対前年増加率は6.7%で増加基調を維持している 。このうち半数以上は従業員30人未満の小規模事業所である。

在留外国人のうち、定住・永住者等と専門的・技能的分野の就業者が多くを占め、国籍ではベトナム人が最多

日本では入国や在留について 、主に出入国管理及び難民認定法(入国管理法)に規定されている。国は、入国審査のためにビザ(査証)を発給することで、対象者の在留資格とその範囲内での在留(期間は一般に5年以下)と活動を認めている。現在の日本の在留資格は29種類あり、うち就労資格は「技能実習」、「特定技能」を含む19種類となる 。就業資格以外で日本国内に滞在している場合(留学生、家族滞在など)でも資格外活動許可により就業は可能であり、一例として留学生のアルバイトは27万人(2023年10月時点)に上る。なお、 永住者など身分に基づく在留資格の場合は就労に制限は無い。このように多様なケースがある外国人労働者を在留資格別に分けると、下表のとおり大きく5つにまとめられる。

「1.身分に基づく在留資格」は居住資格であり、子ども等も含まれるため、必ずしも全員が就労しているとは限らない。一般に、就労を目的としたビザの発給対象は下記の表の技能実習と専門的・技能的分野の在留資格であり、技能実習は全体の2割、専門的・技能的分野は全体の約3割を占める。また、留学生のアルバイトを含む資格外活動も約2割となっている。

外国人労働者数(在留資格別)

出所:厚生労働省『外国人雇用状況』の届出状況(2023年10月末)を基にUzabase作成

国籍別に見ると 、最も多いのはベトナムで、これまで最多だった中国を2020年に追い抜いた。外国人労働者数のうち、ベトナムは全体の4分の1(約52万人)、中国は5分の1(約40万人)を占めている 。ただし、それぞれの在留資格の状況は大きく異なる。

急増しているベトナム人労働者は、技能実習生と留学生が全体の約6割 を占める。低賃金で働く若年層が多いと推察される。一方で、中国人労働者の約3割 が永住者であり、高度外国人材(いわゆる「エリート」)の該当者も多い。日本で働く外国人のうち、専門的・技術的分野の在留資格を有する人数は、先進国(G8+豪州+ニュージーランド)の合計が4.7万人である一方  、中国は約15万人と群を抜いている。

外国人労働者数(国籍別)

出所:厚生労働省『外国人雇用状況』の届出状況(2023年10月末現在)

外国人労働者の雇用状況は産業ごとに傾向が異なる

産業別では、コロナ禍を含めても建設業および医療福祉において外国人労働者の雇用割合が多い。コロナ禍で入国制限のあった2020‐22年は、市況悪化もあり、ほとんどの産業で外国人労働者の割合が落ちた。しかし、入職者数が少なく欠員率の高い建設業は、入国制限が解除された2023年は大きく増加した。一方、コロナ禍の影響が大きい宿泊・飲食やサービス業は、欠員率・離職率がともに高いまま、外国人雇用も進んでいないことが窺える。

外国人雇用事業所数:対前年増減比

出所:厚生労働省『外国人雇用状況の届出状況』

注:各年10月末時点の情報

欠員率、離職状況(産業別)2022年上半期

出所:厚生労働省『雇用動向調査』を基にUzabase作成

人材不足が顕著な特定業種を対象とした新たな在留資格が追加される

日本では入国や在留について、主に出入国管理及び難民認定法(入国管理法)に基づいて取り決めている。国は、入国審査のためにビザ(査証)を発給することで、対象者の在留資格とその範囲内での在留(期間は一般に5年以下)と活動を認めている。就労目的で在留する場合、そのための在留資格は業種ごと(経営・管理、法律・会計業務、医療等)に19種類ある。

2019年4月、入国管理法の改正によって人手不足が深刻な14業種(介護、建設、外食など)を対象にした新たな在留資格「特定技能」が創設された。それまでも存在した就労可能な在留資格は、主に技能実習か専門的・技術的分野の在留資格の場合、業種は「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」などホワイトカラーが中心であり、業種等において一定の制約があった。これに対して、「特定技能」は事実上、単純労働者の受入が可能となり、業種の幅が拡大した。

本改正による在留資格の創設は、「深刻化する人手不足への対応」として特に人材確保が困難な産業において「一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れる」(出入国在留管理庁資料)ことを趣旨として明示しており、人手不足を外国人労働者で補うことが目的である。

2019年4月に新規創設された在留資格「特定技能」

出所:法務省出入国在留管理庁『新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組』などを基にUzabase作成

在留資格である「技能実習」と「特定技能(1号)」の違いは、主として求められる技術水準や雇用環境に現れる。技能実習生は入国時に特段の技能水準は必要とされないが、外国政府の推薦や認定を受けた送出機関と受入機関(雇用者側の企業)のマッチングが必要となり、常勤職員数に応じた人数枠がある。転籍や転職は原則できない。一方、特定技能1号は送出機関がなく、受入機関が海外で採用活動をしたり人材会社を活用したりすることで雇用がなされ、人数枠がない。相当程度の知識や経験を有する個人が対象になり、同一業務区分内であれば転職は認められる。

技能実習制度の問題点が顕在化する一方、特定技能制度の活用促進が図られる

近年、技能実習制度の健全な運用にあたっては問題点が顕在化している。本制度は、1993年、開発途上国等へ日本の技術を移転して国際協力を行うことを目的に「外国人技能実習制度」が制度化された。実習後は習得した技術を母国に持ち帰り経済発展に役立てていくため最長5年のビザとなっている。しかし、近年は目的が形骸化し、労働力の確保として利用されている実態がある 。

実際、技能実習では、基本的に転職はできず、退職は帰国を意味する。この制度設計により開始当初からトラブルが多発し、違法な低賃金で外国人労働者を酷使する、パスポートを取り上げるなどの事例が絶えなかった。そのため、2010年以降、複数回に渡り適正化が図られたが、厚生労働省「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(2020年、2021年)」や米国国務省の人身売買報告書(2021年、2022年、2023年)でも技能実習生の人権保護の観点から問題が指摘されている。そこで、政府は技能実習制度を廃止し、人材育成を目的とした新たな制度の導入を発表した 。新たな制度では、転職も可能となる見込みである。

一方 、2019年に創設された特定技能については、特定技能の資格を持って入国する人数は少ないものの、2022年以降、在留資格の切り替えにより特定技能の資格を得る人数が増えている。実際、2023年6月時点において、特定技能の資格を持って入国した者は約4万人、在留資格を特定技能に切り替えた者は約13万人である。特定技能の資格を持つ外国人のうち、国籍別ではベトナム人が約6割を占めて最も多く 、産業別では 、飲食料品製造業が3割、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業が2割となっている。

特定技能の資格を持つ外国人労働者を受け入れるには 、報酬額が日本人と同等以上など、外国人と結ぶ雇用契約が適切であること、外国人の支援体制があることなど条件がある。外国人への支援体制については、一定の基準を満たす登録支援機関への委託が可能である。登録支援機関 は、法律上の欠格事由に該当しないなどの基準を満たす必要があり、出入国管理庁への届出が必要である。法人のみならず、個人事業主も登録が可能で、2024年1月時点で約9,000件の登録 がある。政府は 、外国人向けの説明会や外国人と企業とのマッチングイベントを開催するなど特定技能制度の利用促進を図っている。

マネタイズ

外国人労働者市場は、コロナ禍で停滞しているものの拡大が見込まれる

技能実習制度の設計や、高度人材を日本に呼び込む魅力不足など課題は多いものの、国内での人材不足から今後も外国人労働者の需要は増加していくと考えられる。

「特定技能」の在留資格追加で特に増加が見込まれるのは、いわゆる単純労働を行う低~中所得者層だ。政府の見通しでは2019-24年度の5年間で最大34.5万人の特定技能制度での受入を想定している。ただし、2023年12月末時点で、特定技能1号の外国人は約17万人、特定技能2号の該当者は12人にとどまる(出入国在留管理庁)。人数自体は増加しているが、制度開始の翌年にコロナ禍による入国制限がかかったため、当初の想定ほどには増えていないと考えられる。

一方、2021年度の派遣労働者は約200万人であり、受入目標の34万人の流入を想定すると、人材紹介会社にとってはビジネスチャンスといえる。これまで外国人労働者の就労先は製造業が多かったが、今後は外国語対応などを中心にサービス業のほか、IT人材の就労も増える可能性がある。専門外国人求人サービスの運営会社は、職種や勤務地に加え、求職者の日本語・英語のレベルや職場で活かせる母国語などでの求人検索に対応した求人サイトのUI改善、受入企業へのビザ申請・入国サポート、海外現地でのリクルーティングなどを行い、自社の外国人材母集団により多くの人材を取り込もうとしている。

賃貸住宅は外国人にも需要があり、住宅確保の支援が一部義務化へ

外国人が日本で住宅を借りるハードルは、近年下がっている。実際、家主や集合住宅の住人の意向で、外国人という理由だけで「入居不可」とされることがある。ただし、「在留外国人に対する基礎調査」(2021年、法務省)によると、「外国人であることを理由に入居を断られた経験がある」との回答は16.9%となっており、2017年調査の39.3%に比べ下がっている。

国勢調査(2020年、次回は2025年に調査予定)によると、在留外国人の約半数が民間賃貸住宅に住んでいる。外国人向けゲストハウスやルームシェアリングなどの普及も影響しているとみられる。

「1号特定技能外国人支援に関する運営要領」では、対象となる外国人が適切な住宅を確保できるような支援が一部義務化されており、外国人と家主の双方にとって、これまでよりもさらに賃貸契約のハードルは低くなるだろう。

在留外国人世帯の居住形態

出所:総務省『令和2年国勢調査』を基にUzabase作成

注:「外国人のいる一般世帯」のうち「住宅に住む一般世帯」を総数とし、日本人と同居している場合も含む

日本語学校は教師不足が深刻で需要に追いついていない

文化庁によると、日本語教育を実施する機関・施設のうち、法務省告示機関(法定要件を満たす日本語学校)や大学等機関を中心に日本語教育が行われている。コロナ禍の影響で2020-21年度の学習者数は減少したものの、2022年には回復傾向にあり、機関・施設数は長期的には増加傾向にある。

法務省告示機関では年間760単位時間以上の授業時間が義務付けられており、価格は入学時に10~15万円程度、授業料は年間60~80万円が相場となる。学生寮がある学校も多い。

一方、給与の低さから日本語教師が不足している。2012年からの推移をみても微増にとどまっており、ボランティアなどで教師数を確保する実態がある。

日本語学校・教師数および学習者数

出所:文化庁『国内の日本語教育の概要』

海外送金は銀行よりも手数料が低い資金移動業者によるサービス利用が増えている

在留カードを持つ外国人であれば、銀行で外国人口座開設は可能だが、手数料や可能な取引は金融機関によって異なる。

銀行は実店舗を持つ銀行とネット・ATM専業銀行の2種類に大きく分けられ、実店舗を持つ銀行は、海外入送金が可能だが、手数料は高い。一方、ネット・ATM専業銀行は、各種手数料は低いものの、海外入送金は不可のケースが多い。

近年は、海外送金には手数料の低いWiseのような資金移動業者の利用が増えている。銀行の海外送金は国際銀行間通信協会(SWIFT)のネットワークを利用し、中継銀行を介して行われるため、送金手数料に加えて中継銀行への手数料などがかかり、手数料が高くなる。

一方、資金移動業者は、国内送金の仕組みを利用するため、手数料を低く抑えられる。実際、送金人は、居住国にある事業者の口座にお金を振り込み、事業者は、その金額を受取国にある事業者の口座から受取人の口座へ振り込む。Wiseによると、10万円を米国に送金する際の受取額は、資金移動業者と大手銀行では、最大40ドル強程度の差が出る(2024年1月時点)。

日本の法令では、資金移動業は、銀行以外で為替取引を行う事業者である。1回の取扱高が100万円以下は登録制、取扱高に上限の無い送金を行う事業者は認可制となっており、2023年12月時点で約80の事業者が登録されている。日本資金決算業協会によると、資金移動業者による国外送金は、2019年の取扱件数は約5,000万件で取扱高は1,1兆円だったのに対し、2021年の取扱件数は約7,500万件、取扱高は1.5兆円、2022年の取扱件数は約7,800万件、取扱高は2.3兆円と大きく伸びている(取扱高には個人間送金の他、事業費の送金や海外ショッピングも含む)。

未来

在留カードの発行から日本での生活がスタート、外国人の生活支援サービスが増加傾向

就業を機に日本に住み始める場合は、入国後すぐに空港や居住する自治

体で住民票登録を行い、在留カードを発行してもらう。この在留カードの発行によって、銀行口座の開設が可能になり、給与の振り込み、光熱費など公共料金の支払いなど日本での生活をスタートさせることができる。日本での職探しはメディアやSNS、転職サイトなどが多数あるほか、すでに日本に住んでいる場合はハローワークなども選択肢に入る。

今後の外国人労働者の増加を見越して、不動産賃貸のマッチングサイト、外国人ユーザーにフレンドリーな銀行・金融関連サービスなどが出始めている。

外国人労働者の生活支援サービスが広がる

出所:Uzabase作成

住宅を探す外国人労働者と空き家のマッチングサービスが台頭

DID-GLOBAL社が手掛ける「Apartment Japan」は、大阪を中心とした空き家・空室と、部屋探しをしている外国人労働者をマッチングするサービスを提供する。基本的には不動産仲介会社を介さないため、仲介手数料が不要となる。また、申込金をクレジット決済にすることで、海外にいながら日本の住居探しが決済まで完了する仕組みとなっている。

家主にとっても利点がある。築

年数の経過した空室の収益化が期待できるほか、借り手のIDやパスポート、ビザを事前に確認した上で申し込み前に契約条項に電子署名で合意してもらうため、トラブル回避に繋がる。また、1か月以上の定期借家契約のため、条件の厳しい民泊規制の対象外であるにも関わらず、シーズン別の賃料設定も可能だ。

外国人労働者と空き家をマッチング

出所:DID-GLOBAL発表資料

高度人材の増加と在留期間の長期化は不動産市場の顧客獲得につながる

規制緩和による高所得な高度人材の増加や在留期間の長期化で、住宅の購入を検討する外国人労働者も増えると考えられる。

高所得者層だけでなく、日本人との結婚で永住権を獲得した外国人や家族を帯同する外国人労働者(特定技能2号は条件付きで家族帯同可)も不動産市場の潜在顧客となる。西葛西のリトルインドや大阪府生野区のコリアンタウンなど特定の国籍の外国人が集中する街では外国人学校があるほか、コミュニティや母国の食品が入手できる商店もあり生活しやすい。

国勢調査によると、外国人を含む世帯の持ち家率は約3割であり、今後居住用不動産への需要増加が見込まれる。地方の空き家もターゲットとなるだろう。自治体によってはリフォーム費用など助成金も出る。

在留外国人総数 上位10自治体

出所:法務省『在留外国人統計』、東京都、川口市、大阪市のWebサイトを基にUzabase作成

注:在留外国人統計は2022年12月末時点、東京都、および川口市の総人口は2023年1月1日時点、大阪市生野区の総人口は2022年12月末時点の数値を使用

青山 武史

青山 武史

グロービス経営大学院大学でMBAを取得し、キャリアを一貫してクリエイティブ、テクノロジー、ビジネスを高度に融合させた新規事業開発やイノベーションの創出を主導して来た。スタートアップ(最高事業責任者)や事業会社(マーケティング最高責任者)等でマーケティングからサービス開発までの新規事業開発の経験を積み、多くの事業で収益規模を拡大し、大手企業とのアライアンスに携わった。現在はYKK APにて新規事業開発部担当部長として、再生エネルギー事業の推進と新規領域の探索を担当。Point0を通して大手企業と共創活動を推進。渋谷未来デザインとSWiTCHとのカーボンニュートラルプロジェクト「CNUD」に参画。個人としても大手エネルギー企業のヘルスケ領域の新規事業開発支援コンサルティング実績多数。

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