最新の記事はこちらから

ラストマイル配送

文章最終更新日:2024年01月29日

トレンド概要

ラストマイル配送で配達ドロイド・自動配達車両・ドローンを活用すれば人間の関与を最小限に抑えられる

「ラストマイル配送」とは、小売店や倉庫などの流通センターから最終消費者に製品を配達するプロセスを指す。ラストマイル配送の自動化は、人間がほとんど、または全く関与せずに、ロボットや自動走行車両により最終消費者に商品を届けることを指す。

自動化する方式は、1)歩道を走行する自律型ロボットである配達ドロイド、2)公道を走行する自動配達車両(ADV)、3)無人航空機の配達ドローン(UAV)である。この3つの方式は、いずれも人間の関与を最小限に抑えて、労働コストを大きく削減できると期待されている。

ラストマイル配送の自動化の主な方式と概要

出所:Uzabase作成

人件費の大幅削減とEC拡大がラストマイル配送自動化の原動力

ラストマイル配送自動化のソフトウェアソリューションを提供するElite EXTRAによると、ラストマイル配送は出荷コスト全体の平均約53%を占め、このうちラストマイル配送にかかる費用の5~6割を人件費が占めている(2023年)。こうした労働集約的な業務特性がもたらす人件費の高さが自動化ニーズ拡大につながっている。

ラストマイル配送の自動化をけん引しているもう1つの要因は、ECの拡大である。現在のラストマイル配送の高コストと配達員の不足は、今後の普及の大きなボトルネックとなっている。EC企業のAmazon(USA)などが自動化を採用している。Starship Technologies(USA)は2022年、フードデリバリー企業のGrubHub(USA)と提携し、全米の大学キャンパスでドロイドによる配達サービスの提供を開始した。

コロナ禍でソーシャルディスタンスの確保や非接触型の活動を実施する上での不可欠なツールとして、ラストマイル配送の自動化が注目されるようになった。たとえば、JD.com(京东、CHN)は2022年に上海市内の浦東新区で配達ドロイドの運用を開始し、ロックダウン中の一部の地域にラストマイル配送を提供した。

自動運転技術の進歩によって自動化が実現可能に、ドロイドと自動配達車両が商業利用で先行

ラストマイル配送自動化は、センサ(高性能カメラを含む)、コネクティビティ(交通、天候、路面状況へのリアルタイムアクセスを可能にする)、バッテリー技術など、自動運転車に関する様々な技術が進歩することで実現できる。ソフトウェア・アルゴリズムは、センサ/接続ソースから収集される膨大な量のデータを保存・処理し、速度、ブレーキ、走行ルートの選定に関する自律的な決定を下すのに役立つ。

ラストマイル配送自動化の方式は、配達速度、1回あたりの走行距離、荷物のサイズ、運用コストの面でそれぞれ異なる特徴を持ち、1つの要素で優れていても他の要素が劣ることもよくある。たとえば、最速の配送方式であるドローンは、バッテリー容量が小さいため飛行時間が短く、小型の荷物しか運べないという難点がある。これに対し、最も遅い方式であるドロイドは、自動配達車両に比べて電力消費・コストが低く、ドローンより多くの荷物を運べる。それぞれの特徴を以下にまとめる。

・自動配達車両:道路網を利用できることから、郊外でも都市部でも有用である。1回の走行で多くの荷物を配達できることから信頼性が高く、通常配達や時間指定、当日配達などに幅広く対応。

・ドロイド:短距離配達を低コストで行うことができるため、即時配達市場で重要な方式となる。歩道を利用することから、都市部や郊外での当日配達や信頼性の高い配達に有用であるが、歩道が狭い都市や人通りの多い都市では難点もあり得る。

・ドローン:配送コストが高いため、信頼性の高い配送(医療品など)や郊外への当日配達に限定されるとみられる。人口密集地での使用は安全上の理由から現実的ではない。

配達ドローンに対する規制が最も厳しい、自動配達車両に対する規制は自動運転車と類似

配達ドローンに対する規制は、1)航空機と空域を共有しなければならないため、別途ドローン航空管制システムが必要になること、2)一定の建物の上空を飛行する際の安全上の問題があること、3)誤作動で人や財産に損害が生じる危険性等があることなどから、要件が厳しい傾向がある。

米国では、ドローンによる商業配達事業を開始するには、米連邦航空局(FAA)のPart135認可を取得することが義務付けられている。中国では国家郵政局が2021年よりドローンによる速達に関する国家基準を導入した。ラストマイル配送関連サービスおよびドローン運用の安全性向上、ならびに都市部のエアモビリティの促進を目的としている。同基準は、EHang(亿航智能)、JD.com、ZTO Express(中通快递)などの国内企業と共同で策定された。

配達ドロイドが直面する規制上のハードルは、主に歩道の共用に係る法規に関するものである。一部の欧州諸国(エストニアやオーストリアなど)と米国の一部の州(フロリダ州やジョージア州など)では、配達用ドロイドが歩道を走行できる法律を既に策定している。これらの法律では基本的に、速度制限(時速4~12マイル/6~19km)と、貨物を除くドロイドの最大重量(50~550ポンド/23~248kg)が規定されている。日本では、2023年に道路交通法が改正され、自動配達ドロイドの公道走行が認められた。なお、ドロイドに完全自律機能を付与する前提として、人間による監視と制御が実施される。

自動配達車両には自動運転車と同様の規制が適用される。たとえば米国では、自動配達車両が公道を走行するには、自動運転の乗用車に適用されるのと同じ例外事項である連邦自動車安全基準(FMVSS)の免除を受けることが必要である。

マネタイズ

EC拡大に伴う配達の増加によりドロイドと自動配達車両の米国市場は、2040年までに190~650億ドルに成長する可能性も

Precedence Researchによると、2022年の世界の自動ラストマイル配送市場は約30億ドル規模となり、2022-32年にかけて年平均成長率(CAGR)約24%で成長すると予測される。地域別では北米がリードし、2022年で市場売上高の約47%を占めた。その要因として、同地域はラストマイル配送自動化に関する特許数の多さや規制環境が整備されていることに加え、自動運転関連企業が複数所在する米国の存在が挙げられる。

KPMGの分析によると、2040年までに米国での荷物の自動配達の総距離は370~1,250億kmになると予測されている。この予測では、2040年までに米国における買い物のための移動が現在の水準から3~5割減少する(2017年比)と想定、また、ラストマイル配送自動化が提供する利便性と低コストが要因で、オンラインでの商品購入が1.5~3倍に拡大すると想定している。さらに、翌日配達、当日配達、即時配達の構成比はそれぞれ約47%、29%、23%になると予測される。

本レポートでは、2040年までに上述の総配達距離を達成すれば、ドロイド・自動配達車両市場の規模が約190~650億ドルに達すると試算する。このためには同年までに米国で200~700万台の自動配達ユニット(自動配達車両・ドロイド)を運用する必要がある。この試算では、すべての即時配達と当日配達はドロイド、すべての翌日配達は自動配達車両によって処理されると仮定する。

米国におけるドロイド・自動配達車両の市場成長シナリオ

出所:KPMG『Autonomy delivers: An oncoming revolution in the movement of goods』(2018年、入手可能な最新データ)を基にUzabase作成

注1:シナリオ1は、2040年までに米国での買い物のための移動が30%減少、シナリオ2は50%減少すると仮定。AとBのサブシナリオは、注文頻度がそれぞれ1.5倍と3倍の場合を示す

注2:ユニット単価と年間走行距離の値は仮定

配達ドロイドとオペレーターのコストが自動配送のコストを決定する

ラストマイル配送自動化によるコスト削減は試験運用での料金設定からも確認できる。Starship Technologiesの平均配送単価は、Uber Eats(USA)やPostmates(USA)などの即時配達業者の料金よりも5割ほど安い。同様に、Nuro(USA)の当日配達料金は、AmazonやFedEx(USA)の当日配達料金よりも4割ほど安くなっている。

事業展開を成功させる鍵は配達ドロイドのコストにあると考えられる。そのため、配達1回あたりの1)製品コスト(想定される製品コストに基づく減価償却費)、2)電力コスト、3)算出した維持管理コスト、4)オペレーター人件費(ドロイドを監視し、混雑した道路の横断や故障などの複雑な状況でサポートを提供する)を考慮して、配達ドロイドを使用して配達業務を実行する際のコスト構造を分析した。オペレーターは1日あたり約100台のドロイドを遠隔操作・管理できると想定する。

本レポートの分析では、配達ドロイドの想定価格を5,000~1万ドルとする場合、配達1回あたりのコストは約2.6~3.7ドルとなり(下表のシナリオ3と4)、Starshipの現在の試験運用段階での配達料金の約2ドルを上回る。配達ドロイドのコストが約2,500ドル未満の場合(シナリオ1と2)、配達1回あたりのコストは約2ドルまで下がる。この技術が広く採用されるためには、この水準に到達することが必要である。

配達ドロイドの運用コスト分析

出所:Uzabase作成

注:維持管理費は製品コストの15%と仮定

最大のコスト要素は配達ドロイドのオペレーターの給与(上記表項目4)となっており、上記の仮定では時給23ドル程度としている(米国の配達ドライバーの給与の1.4倍程度と仮定、2024年1月時点)。比較のために、オペレーターの時給が15ドルを下回った場合を仮定すると、配達ドロイドのコストは約5,000ドルの水準で維持できる。これは、自動化機能と人間のオペレーターの関与とのトレードオフも示している。

ドロイドの価格とオペレーターの人件費に基づく配達1回あたりのコスト

出所:Uzabase作成

未来

自動配達企業との提携や自社開発により、バリューチェーン全体で自動化が進む

現在、ラストマイル配送自動化は自社物流を持つ販売業者と、外部の配達サービス業者の両方によって行われている。そのため、販売業者と配達サービス業者の両方を潜在的なユーザーと考えることができる。販売業者側では主なユーザーは次のようになる。

・EC事業者:ラストマイル配送を自動化してコストを削減し、ECのさらなる普及に取り組む。Amazonは2022年時点で、カリフォルニア州ロックフォードでドローン配送サービス「Prime Air」を一部開始した。

・食品・消費財の小売業者:ラストマイル配送自動化を活用している。2023年、Domino’s Pizza(USA)は自動運転車両を活用する物流企業Goggo Network(ESP)と提携し、マドリードのアルコベンダスで自動配達ドロイドの試験運用を開始した。

配達サービス業者側では、次の2つのグループもラストマイル配送自動化のユーザーとなる可能性が高い。

・速達/宅配業者-UPS(USA)など:配達市場で競争力を維持するために自動化を導入する可能性が高い。

・オンデマンド型飲食宅配代行業者-Uber Eats(USA)など:オンデマンドの商品配達は、ラストマイル配送の人件費を削減する代替配達方式として浮上している。

ラストマイル配送自動化の応用は、以下の2つに大きく分けられる。

・ラストマイル配送自動化企業との提携:主に小売企業やオンデマンド宅配企業などでみられる。米国企業のWalmartKroger、Domino’s PizzaなどがNuroとの提携により自動配達を実施している。

・ラストマイル配送自動化の自社開発:自動化に投資する資本と業界ノウハウを有する EC大手や宅配便企業などが展開している。なお、ラストマイル配送自動化企業と提携する動きもみられる。例として、Amazonの自動配達ロボット「Amazon Scout」やUPSの子会社UPS Flight Forwardが手掛ける配送ドローンなどが挙げられる。

ラストマイル配送バリューチェーンにおける自動化

出所:Uzabase作成

大学でドロイド展開が成功、複雑でない環境とユーザーの受容度が要因

Grubhubは2023年、Starship Technologiesとの提携でサム・ヒューストン州立大学に配達ドロイドを導入し、学内の8軒の飲食店からの配達サービスの提供を開始した。Kiwibotも、2017年にカリフォルニア大学バークレー校で同様の運用を開始した。2023年2月時点で米国内の29の大学キャンパスと中東地域の2つの大学キャンパスへ運用を拡大している。このほか、ドロイドメーカーCartken(USA)も2022年にGrubhubと提携し、全米のGrubhub提携キャンパスに配達ドロイドを配備した。

このような大学へのラストマイル配送の導入成功の要因として、都市の住宅地と比較して大学構内の環境がそれほど複雑ではないことと、学生が新しいテクノロジーを取り入れることに抵抗がないことが挙げられる。

医療用品の配達はドローン活用の重要分野

医療用品の配達は高額となることが多く、また時間が極めて重要であることから、配達ドローンが強みを発揮する分野として注目される。たとえば配達ドローンを使用して医療用品を配達するZipline(USA)はルワンダ、ガーナ、米国、日本などで事業を展開している。同社は、コンビニ・食料雑貨店、飲食店の配達にも対応している。

2022年、Drone Delivery CanadaがDSV Air & Sea(CAN)およびHalton Healthcare(CAN)と提携し、医療物資を配送する6か月間の配送試験を実施した。2023年、Ziplineは医療品配送企業のApian(GBR)と提携し、英国の公的医療制度である国民保険サービス(NHS)下で実施されている医療施設への医薬品配送プログラムの改善に取り組んだ。

遠隔操作型ドロイドが登場、商品化を促進

ラストマイル配送自動化の分野では、配達ドロイドの下位部門として、自律型ではなく遠隔操作が可能なドロイドが登場している。この遠隔操作型ドロイドは、州政府や地方自治体が自動運転ロボットに対して抱いている安全性などの懸念を解消しうることから、早期に商品化できる可能性を秘めている。このような配達ドロイドのメーカーには、Coco(USA)やBizero(TUR)などが挙げられ、配送試験に取り組んでいる。Cocoは2021年にBayside Hotel(USA)、Bizeroは2021年にRumeli Hisarüstüファーマーズマーケット(TUR)と提携した。2023年6月時点で、Cocoはテキサス州と南カリフォルニアに数千台のドロイドを展開し、提携レストランから2マイル以内の配達を実施しているという。

青山 武史

青山 武史

グロービス経営大学院大学でMBAを取得し、キャリアを一貫してクリエイティブ、テクノロジー、ビジネスを高度に融合させた新規事業開発やイノベーションの創出を主導して来た。スタートアップ(最高事業責任者)や事業会社(マーケティング最高責任者)等でマーケティングからサービス開発までの新規事業開発の経験を積み、多くの事業で収益規模を拡大し、大手企業とのアライアンスに携わった。現在はYKK APにて新規事業開発部担当部長として、再生エネルギー事業の推進と新規領域の探索を担当。Point0を通して大手企業と共創活動を推進。渋谷未来デザインとSWiTCHとのカーボンニュートラルプロジェクト「CNUD」に参画。個人としても大手エネルギー企業のヘルスケ領域の新規事業開発支援コンサルティング実績多数。

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


関連記事