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廃プラスチック

文章最終更新日:2023年09月15日

トレンド概要

廃プラスチックは投棄による環境負荷やリサイクル率の低さが課題

世界の廃棄物のうち、プラスチック類は12%を占め、食品類、紙に次いで多い。さらに、廃プラスチックのうち5割近くを占める包装材は、回収されずに環境中に残りやすい。廃プラスチックは自然分解が極めて遅いため、場合によっては環境を汚染したり動物に害を与えたりすることがある。また、プラスチックのリサイクル率もガラスびんやアルミ缶などと比較すると低い。本トレンドではそうした廃プラスチックのリサイクルや廃棄などの課題解決にかかる技術、サービスを扱う。リサイクルなどの問題は欧州が先進的に取り組んでいるため、主に欧州を取り上げる。

廃棄物の現状

*サーマルリサイクルを含まない

**容器のみ

注:廃棄量構成比は2016年、リサイクル率は2018-22年の結果に基づき記載

出所:各種資料を基にUzabase作成

先進国と開発途上国では課題が異なる

廃プラスチックをめぐる課題は先進国と開発途上国で異なっており、先進国ではコスト要因によるリサイクル率の低さが問題である。一方、開発途上国ではそもそも廃棄物の収集システムが未整備の地域があること、収集してもオープンダンプと呼ばれる廃棄物を野積みするだけの集積所が多いことなどがあり、分解されにくい廃プラスチックが環境に負荷を与えている。

廃棄物に関する課題

出所:Uzabase作成

きっかけは中国による廃プラスチック輸入規制

プラスチックは廃棄物の中でも比較的大きな項目だが、従来先進国の多くは、その廃プラスチック処理を自国で完結するのではなく、国外に輸出することで対処してきた。2000年頃から米国、ドイツ、日本などが輸出し、2016年までは世界の輸出量の半数を中国が処理していた。また、2016年時点ではタイやベトナム、インドネシアなども中国へ多量の廃プラスチックを輸出していた。

しかし、中国はこれまでにも段階的に輸入を規制してきたが、2018年には原則輸入禁止の措置をとったことで、輸出国は自国内での処理を迫られることとなった。

廃プラスチックの国別輸出額およびプラスチック生産量

出所:UNComtrade、PlasticEurope資料を基にUzabase作成

経済成長国では、包装材をはじめとする廃棄物が処理能力を超えて増加

問題は先進国にとどまらない。アジアを中心に経済が急激に成長した国では、プラスチック消費が廃棄物の処理能力を上回り、結果として処理しきれない廃棄物が様々な問題を生んでいる。

1人当たりGDPと1人当たり廃棄物排出量をみると、GDPが2万ドル未満のグループではGDPに比例して廃棄物量も増加している。

GDPと廃棄物量

注:国ごとに統計の時点が異なる(2014~2019年)

円の大きさはGDP成長率を示す

出所:World bank data

急拡大する消費に対し、廃棄物処理システムの構築には時間とコストがかかる。

1人当たりGDPが2万ドル未満の国では、廃棄物の回収カバー率が低く回収システム構築が追いついていない地域が存在する。また、処分方法もオープンダンプと呼ばれる、廃棄場所にごみを積み上げるだけの手法も残っているほか、埋立処分をしている場合でも管理されていない可能性がある。なお、リサイクルはほとんど行われていない。

特に廃プラスチックは自然に分解されないため、深刻な問題となっている。

このような状況もあり、中国をはじめとするアジア各国を排出源とする海洋ごみの問題が指摘されている。

1人当たりGDPとごみ処分状況

注:国ごとに統計の時点が異なる(2014~2019年)  

注:廃棄物回収カバー率は人口ベース、分解必要年数は加重平均値 

出所:World bank data

焦点は処理対策からSDGsに移行、国際的な取り組みが進む

前述の中国による廃プラスチックの輸入規制が引き金となり、2010年代後半世界的にプラスチック規制が加速、同時期に世界的な話題となった海洋ごみ問題も規制加速を後押しした。しかし、長期的には、循環型社会へ移行しようとする国際的な取り組みがある。

2015年に国連で採択されたSDGsを筆頭に、2019年にリサイクルに適さない廃プラスチックがバーゼル条約の規制対象となったほか、2021年のG20環境相による共同声明(2022~23年は見送り)、ASEANの海洋ごみに対するアクションプランなどが挙げられる。直近では、2023年9月に国連環境計画がプラスチック汚染規制の国際条約の草案を公表、2025年までに強制力のある条約を作成予定である。

各国の規制状況をみると、現在多いのはプラスチック製レジ袋と食器・容器類の規制である。

特にEUでは2018年に欧州プラスチック戦略を発表、2019年には使い捨てプラスチック製品の禁止指令を採択した。EU加盟国では2年を目途に国内法の整備が必要とされ、ドイツやフランスを筆頭に規制が進んだ。また、英国でも同様の規制が導入されている。今後EUは包装材のリサイクルのほか、デポジットや再利用、詰め替えなどの制度整備を進める方針 を示しており、規制の強化とともにこうした市場が拡大していくとみられる。

米国でもカリフォルニア州など一部では、プラスチック製のレジ袋や食器・容器などの規制が進む。また、米国環境保護庁は2023年に「プラスチック汚染防止のための国家戦略草案」を公表、2040年までに陸上からの廃プラスチック流出をゼロにすることを目的に、自主的行動を掲示している。

日本ではレジ袋規制のほか、2022年施行の「プラスチック資源循環促進法」では指定した12品目の使用削減やプラスチック製品のリサイクル促進が規定されている。

なお、現在規制がほとんどない包装容器以外のプラスチック類についても、欧州環境庁(EEA) では管理が不十分と指摘、今後の政策の立案と効果測定の基礎となるデータ整備が必要という見解を示している。

主な廃プラスチック規制

出所:各種資料に基づきUzabase作成

 

 

解決にはリサイクルと代替素材の双方が必要

廃プラスチックの問題解決に対しては、様々な技術やサービスが必要とされる。

生分解性のバイオプラスチックへの転換に加えて、行政支出に依存しない商業的回収システムの構築や、様々な材質が混在するプラスチック製品をセンサーで自動分別する技術、化学的に分解して原材料に戻すケミカルリサイクル技術などが挙げられる。

なお、開発途上国においては廃棄物処理システムの未整備も大きな課題であり、廃棄物処理場の建設が増加している。

廃プラスチック対策として期待される技術・サービス

出所:Uzabase作成

生分解性素材も回収を要する

プラスチック規制では生分解性素材は対象外となっていることが多いが、生分解性素材にすれば問題が解決するとは限らない。現在の生分解性素材に関する欧州の民間認証機関の基準をみると、58℃のコンポスト下で6か月、25℃の土壌中で2年、30℃の海水中で6か月などの条件となっている。分解に数十年かかる通常のプラスチック容器と比べると大幅に短縮されているが、急速に増加する消費動向を考えると、生分解性素材であっても適切な回収と処理が必要となる。

なお、ドイツで制定途中である有機廃棄物令では、コンポストなどに用いる有機廃棄物から生分解性プラスチックも除去することを求めている。

欧州認証機関(TÜV AUSTRIA)における生分解素材の認証基準

出所:DJK Webサイト

マネタイズ

生分解性バイオプラスチックの包装向け潜在市場は現在の100倍以上

European Bioplasticsによると、2022年の生分解性バイオプラスチックの生産能力は全体で222万トン、包装用途で70万トンとなっている。2021年の世界のプラスチック生産量が3.9億トン、包装用途は3~4割を占めることから、生分解性バイオプラスチックは生産能力の100倍以上の潜在市場があると試算される。当然ながら価格面の問題はあるものの、規制強化などもあり市場は徐々に拡大するとみられる。

プラスチックリサイクルは投下コストと販売価格が問題、相場上昇がビジネス化を後押し

廃プラスチックのリサイクルでは、採算性が最大の課題である。Tinbergen Instituteによると、オランダではプラスチックの回収・処理コストを再生原料の販売価格が下回る状態となっており、採算がとれていない。

現状はその差額を自治体が負担する形となっているが、廃プラスチックの回収を加速させるには回収コストの低下と再生原料価格の引き上げが課題となる。

なお、直近ではプラスチック原材料の上昇や供給不足から、リサイクル素材の需要が高まっている。 RecyclingMarkets.netによると、2019年7月時点で廃品回収による無色HDPE(高密度ポリエチレン)の価格は20セント/ポンドだったが、2023年1月時点では62セント/ポンドとなっている。この価格を適用して試算すると、上記処理コストを上回る。価格は変動が激しいためこの価格を基準に考えることはできないが、樹脂全体の相場上昇や再生原材料の品質向上によって価格が上昇すると、公的支援がなくてもリサイクルビジネスが成立しやすくなることがわかる。

ただし、2023年7月時点ではプラスチックベール(収集した使用済み容器包装を圧縮・梱包したもの)の価格が急速に下落したことにより、廃品回収による無色HDPEの価格は23セント/ポンドと急落しており、再生原料の販売価格の上昇を維持することはまだ難しい。

プラスチックの処理コスト・再生原料価格の比較イメージ

出所:Tinbergen Institute「A Cost-Effectiveness Analysis For Incineration Or Recycling Of Dutch Household Plastics」などを基にUzabase作成

未来

プラスチック規制の強化により広範囲に影響

プラスチック規制の強化により、前述のように生分解性プラスチックなどの「代替素材」、廃棄物処理関連では「民間回収システム」「選別自動化技術」「ケミカルリサイクル技術」「開発途上国におけるごみ焼却発電建設・運営サービス」などの各種対応技術やサービスの市場が拡大する。その他、樹脂原料を生産する化学・素材メーカー、商品のパッケージングに使用する食品や消費財メーカー、レジ袋や容器・食器類を使用する小売・外食企業など、広範囲に影響がある。

なお、こうした技術やサービスは環境先進国の多い欧州企業によるものが多いが、ケミカルリサイクルに取り組む化学メーカーのEastman Chemical(USA)やAgilyx(USA)などの米国企業も存在する。

バリューチェーン

出所:Uzabase作成

プラスチック廃棄物に対する対処方法

出所:Uzabase作成

短期的に置換できる代替素材に注目が集まる

プラスチック規制では植物由来製品は除外となっている場合が多く、NatureWorks(USA)やBiome Technologies(GBR)などの代替素材メーカーが注目を集めている。また、LIMEXを展開するTBMのように石灰石を主原料とする製品もみられる。

参入企業としては、化学大手のBASF(DEU)、海正生物材料(Zhejiang Hisun Biomaterials、CHN)、プラスチック規制のあるインドではTrue Green(IND)やEnviGreen(IND)など複数の企業が存在する(詳細についてはトレンド「バイオプラスチック」を参照)。

ただし、石油由来プラスチック製品との対比では、さらなる価格低下に加えて、生分解性と耐久性、バリア性などの機能の向上が求められる。

配送車の復路便を活用する民間回収システム

プラスチックの使用を減らすことはできても、現時点ではゼロとすることは難しい。また、前述の通り、生分解性素材であっても回収してリサイクルすることが必要である。しかし、行政による廃プラスチックの回収には限界があるため、民間による商業的回収システムの構築が必要とされる。

食品トレーで日本トップメーカーのエフピコは、食品トレーの回収・リサイクルを自社展開している。回収だけを行う場合、輸送コストがかかるが、包装資材卸事業者などの納品帰りの車両を利用して運搬することで、コストを大幅に圧縮できる。再生処理は自社工場で行い、そのまま食品トレーの原料として利用するため、品質管理なども行いやすいほか、原料調達価格の安定化といった利点もある。

エフピコのトレー再生フロー

出所:エフピコ資料に基づきUzabase作成

開発途上国などではインセンティブ付の収集・分別サービスが機能

インドネシアでは、ごみ銀行と呼ばれるリサイクルシステムが確立している。ごみ銀行は、家庭から資源ごみを買い取り、リサイクル業者に売却する。集約・分別することで、効率化や資源価値の向上が見込める。買い取りの際、即時払いではなく、一定期間以上経つと現金を引き出すことができるという点で銀行と呼ばれる。2023年時点で、インドネシア国内に1.4万か所以上のごみ銀行が存在する。運営主体は一般企業から地域団体(ボランティア)まで様々である。

また、タイのスタートアップTrash Lucky(THA)は独自に資源ごみの回収サービスを展開している。持ち込みや専用ボックスによる送付(有料・送料込)などで資源ごみを回収し、重量に応じてくじを配布、リサイクル事業者への売却益をくじの景品として参加者に還元する。

こうしたインセンティブ方式は、相対的に容器コストが高く、また分別コストの安い開発途上国を中心に有効と考えられる。

インドネシアのごみ銀行分布(2023年時点)

出所:SIPSN(Sistem Informasi Pengelolaan Sampah Nasional)

大手メーカーがリサイクルシステム構築や再生材料の採用に取り組む

プラスチック容器を使用する清涼飲料分野では、大手企業が再生ペットボトルの採用やリサイクルシステムの構築に取り組む姿勢を見せる。Danone(FRA)が展開するEvianは2025年までに100%リサイクルのペットボトル使用を、Coca-cola(USA)は2030年までに50%以上をリサイクル素材とする目標を発表している。日本でもキリンホールディングスやサントリーが同様の目標を掲げている。

また、2019年にはCoca-cola、PepsiCo(USA)、Keurig Dr Pepper(USA)が米国のペットボトルリサイクルシステム構築に向けて「Every Bottle Back initiative」を設立した。2023年6月時点で2,200万ドル超を投資、今後10年間で7億2,600万ポンド以上のPET(ポリエチレンテレフタラート)を回収する予定となっている。

廃棄物問題を扱うソーシャルベンチャーのTerraCycle(USA)では、消費財・食品のグローバル大手と連携、容器リサイクルを前提としたショッピングサイトLoopの運営を開始した。同サイトによる試みは2019年以降米国、カナダ、フランス、イギリス、日本、オーストラリアで展開、さらなる地域の拡大を目指している。

センサーによる自動分別技術を活用

廃プラスチックは様々な素材が混在しているため、リサイクル素材の純度を引き上げるためには適切な分別が必要である。特に人手による分別・回収が難しい先進国では、機械化・自動化が重要な手法の一つとなる。

ノルウェーの飲料容器自動回収機(Reverse Vending Machine)メーカーTomra(NOR)は、欧州をはじめ世界各国で8万台以上の自動回収機を展開している。ペットボトルやプラスチック容器、缶などの素材をセンサーで判別し、破砕・圧縮により大量にストックする。高精度・人手不要の分別機能、容器圧縮による輸送効率の向上などが利点である。持ち込んだ消費者に当該店舗で利用できるポイントを付与するなど、インセンティブも設定されている。

また、産業廃棄物分野ではAMP Robotics(USA)の分別ロボットや、Terex(USA)のZenRoboticsなど、自動分別ロボットの導入事例もみられる。光センサーでプラスチックの材質(PE、PP等)・色別に分別する選別機もあり、これらを活用することで効率化と再生原料の純度向上が可能となる。

青山 武史

青山 武史

グロービス経営大学院大学でMBAを取得し、キャリアを一貫してクリエイティブ、テクノロジー、ビジネスを高度に融合させた新規事業開発やイノベーションの創出を主導して来た。スタートアップ(最高事業責任者)や事業会社(マーケティング最高責任者)等でマーケティングからサービス開発までの新規事業開発の経験を積み、多くの事業で収益規模を拡大し、大手企業とのアライアンスに携わった。現在はYKK APにて新規事業開発部担当部長として、再生エネルギー事業の推進と新規領域の探索を担当。Point0を通して大手企業と共創活動を推進。渋谷未来デザインとSWiTCHとのカーボンニュートラルプロジェクト「CNUD」に参画。個人としても大手エネルギー企業のヘルスケ領域の新規事業開発支援コンサルティング実績多数。

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