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プログラマティック屋外広告

文章最終更新日:2023年09月22日

トレンド概要

プログラマティック屋外広告は、プログラム機能により広告配信がコントロールしやすい

広告は、パソコンやモバイル端末を介したデジタル・プラットフォーム、テレビ、ラジオ、屋外広告など多くの媒体を通じて発信される。屋外広告には、看板、ポスター、交通機関(地下鉄、バスなど)など、家庭外で発信されるあらゆる形態の印刷広告が含まれる。2022年時点で屋外広告が世界の広告支出に占める割合は5%程度にとどまっている。

屋外広告のデジタル版として、広告に画像や動画を使用するデジタル屋外広告が登場し、クリエイティブで柔軟性の高い広告配信へと発展を遂げた。デジタル屋外広告は、ショッピングモールや空港など、ターゲットオーディエンスの目に触れやすい空間に設置されたデジタルスクリーンを通じて配信される。広告スペース(広告在庫)は媒体の所有者と広告主の間で直接売買される。デジタル屋外広告は、表示時間帯が決まっているため、人口動態や時間帯、天候などの変数を考慮して表示する広告を変えることはできない。そのため、どのオーディエンスに広告を表示するかを管理することができず、決められた期間中に意図するターゲットにリーチできるかは不確かといえる。

一方、新たな広告手段として登場したプログラマティック屋外広告は、従来の広告にプログラム機能を追加することで、より効果的にターゲティングすることができる。ウェブサイト、モバイル、アプリといった従来のデジタル広告媒体だけでなく、デジタル看板のような媒体でも利用できる。プログラマティック屋外広告は、入札ベースのソフトウェアやアルゴリズム(プログラム機能)を使用して、広告在庫を自動売買する仕組みとなっている。ソフトウェアは、広告主が指定する時間帯、場所、オーディエンスの属性など様々な変数に基づいて、リアルタイムで広告表示枠の入札を行う。予め定義された変数を満たしていることを条件に、ソフトウェアは「落札者」を特定し広告枠を提供する。本レポートでは、デジタル看板、デジタル交通広告、デジタルファニチャーなど、多種多様なプログラマティック屋外広告媒体における広告枠購入について主に取り上げる。

ウェブサイトなど従来のデジタル媒体によるプログラマティック広告の詳細については、アドテクノロジー業界レポートを参照されたい。

他の屋外広告と比較したプログラマティック屋外広告のメリットとデメリット

出所:Tamoco、Smil Control、The Neuronウェブサイトを基にUzabase作成

プログラマティック屋外広告は、広告の関連性を高めてより効果的にターゲットにリーチできる

プログラマティック屋外広告は、関連性の低いオーディエンスにも広告が配信されてしまう従来の屋外・デジタル屋外広告の課題に本質的に対処することができる。広告の効果は、どれだけ多くのターゲットにリーチし、認識してもらい、商品の購入/消費につなげられるか(広告表示あたり行動回数、actions-per-impression、API)にかかっている。このように、プログラマティック屋外広告は、ターゲットに行動につなげてもらうよう、1日を通して複数のタッチポイントでリアルタイムに適切な広告を配信することで関連性を高めている。

たとえば、Campbell Soup Company(USA)は、気温があらかじめ設定した値を下回った時だけ表示される屋外デジタル看板の広告在庫を購入した。また、Perriogo(GBR)は点鼻薬「Beconase」の広告に関して、花粉の飛散量に基づいたプログラム条件を設定し、花粉症の症状緩和の需要が高いときだけ広告が表示されるようにした。こうして、ターゲット市場により効果的にリーチし、潜在的な売上増を可能にしている。プログラマティック広告プラットフォームStackAdaptと広告インテリジェンスプロバイダーAdvertiser Perceptionsによる米国での調査(2022年第3四半期)によると、回答者の約40%が、翌年以降プログラマティック広告費を増やす予定であるとした。また、回答者の20%近くが、同広告費を増やす理由としてプログラマティック広告の投資対効果とパフォーマンスの高さを挙げた。

広告取引所で取引される広告在庫はスクリーン表示時間であるため、プログラマティック屋外広告では必然的にデジタルスクリーンが媒体となる。しかし、すべてのデジタルスクリーンがプログラマティック機能に対応しているわけではないため、非効率が生じ、迅速な導入が妨げられることも考えられる。

デジタル屋外広告、DSP、SSP、アドエクスチェンジの存在がプログラマティック屋外広告の発展を可能に

プログラマティック屋外広告は、従来のデジタル屋外広告に広告取引プロセスの自動化機能を付加したものである。アドエクスチェンジやテクノロジープラットフォームを活用した広告枠の売買が可能となる。その代表的なものが、デマンドサイドプラットフォーム(DSP、広告主側の広告枠のリアルタイム購入・管理を支援)やサプライサイドプラットフォーム(SSP、広告媒体側の広告枠の管理を支援)などである。

プログラマティック屋外広告市場は細分化されており、バイサイド(DSP)とセルサイド(SSP)のいずれにおいても、規模もサービス内容も異なる複数の企業が存在している。各社とも提供するサービスの性質が異なるため、すべてのDSPとSSPが広告購入のために統合できるわけではない。そのため、在庫の集約が進まず、広告購入プロセスの非効率性が生じている。たとえば、バイサイドでは、広告主は単一のDSPを通じて複数の広告媒体主にアクセスできないのが現状である。そしてセルサイドでは、広告媒体主は複数のDSPとのシームレスな統合を実現するために、SSPごとに異なる要件を満たさなければならない。これに対処するため、Hivestackなどは、DSPとSSPの双方を提供する統合ソリューションを提案している。

プログラマティック屋外広告を可能にする主なテクノロジー

出所:Gourmet AdsおよびThe Neuronを基にUzabase作成

プライバシー規制強化で個人情報の利用が抑制されるも、プログラマティック屋外広告にとっては追い風に

個人情報の悪用を防ぐため、各国でプライバシー規制の強化が進んでいる。今や、個人情報の利用に関わる同意を得ることは必須事項となっており、データの収集、使用、配布に関する透明性は向上したといえる。こうした規制は、個人情報の共有や、企業による第三者からの個人情報の取得の制限にもつながる。個人情報の利用が制限され、特に機密性の高いデータがさらなる規制を受ければ、ターゲットマーケティングの特性である個人情報の有効活用が十分に行えなくなる可能性がある。

このような規制強化の動きは、「1対1」の広告市場に大きな影響を及ぼすと考えられる。ただ、ユーザー行動に関わる情報を大きな規模で利用するプログラマティック屋外広告などの「1対多数」のマーケティングチャネルは、広告主が規制を遵守するために選択する可能性があり、ますます成長すると期待される。

マネタイズ

デジタル屋外広告のシェア拡大に伴い、プログラマティック広告の人気がさらに高まる見込み

市場調査会社Research and Marketsによると、世界のプログラマティック広告(オンライン・デジタル屋外広告)市場は2022年に約70億ドル規模となり、2022-27年にかけて年平均成長率(CAGR)21%で拡大し約190億ドル規模に達すると予測されている。

デジタル屋外広告の普及拡大は、プログラマティック屋外広告が利用できる場所とスクリーンの数の増加を意味する。World Advertising Research Centre(WARC)によると、世界の屋外広告支出に占めるデジタル屋外広告の割合は、2020年の18%から、2023年末までには25%に増加すると予測される。さらに、Alfi(AI企業向けSaaS広告プラットフォーム)によると、屋外広告市場に占めるデジタル屋外広告の割合は、2025年までに33%以上になると見込まれる。国別では、米国、中国、日本がデジタル屋外広告の最大市場となっている(Digital News Daily)。

広告のプログラマティック・バイイングが増加していることも、プログラマティック屋外広告の全体的な成長に寄与すると考えられる。電通は、2025年までにデジタル広告支出の約76%が様々なプラットフォーム(コネクテッドTV、小売、デジタル屋外広告などのチャネルを含む)でプログラマティックに取引されるようになると予測している。プログラマティック屋外広告市場の成長は、普及率の上昇にけん引されるとみられる。たとえば、Insider Intelligenceの推計によると、米国におけるデジタル屋外広告費に占めるプログラマティック広告の割合は、2020年の7%から2023年8月時点で約15%に倍増した。

コスト削減と効果的な広告によるROI向上から、特に中小企業に有用

広告効果は通常、投資収益率(ROI、広告支出によって得られるインプレッション・アクション数)で測定され、より低コストで効果的な広告を通じて高められる。デジタル屋外広告は他の広告媒体と比較して価格競争力が高く、プログラマティック屋外広告はさらに安価であるため、中小企業には魅力的な選択となりつつある。プログラマティック屋外広告は、他の広告手法よりも大幅にコストを抑えることができる。たとえば、Alfiによると、2020年のFacebook広告の平均インプレッション単価(CPM)が7ドルであるのに対し、デジタル屋外広告キャンペーンの平均CPMは2~5ドルとなっている。また、Match2Oneによると、2021年時点で、プログラマティック広告のCPMは約0.5~2ドルであり、広告枠の直接購入が約10ドル以上かかるのに対し約5~20分の1のコストで済む。したがって、低コストかつ高い広告効果からROIを著しく改善できる可能性がある。

プログラマティック屋外広告と従来の屋外広告のコストと効果の比較

出所:Uzabase作成

未来

プログラマティック屋外広告は広告会社とSSP・DSP間の連携を促進

プログラマティック屋外広告のバリューチェーンには、広告会社と広告媒体主の相互作用を促進するステークホルダーが多く関わっている。その中でも特に重要なのが、デジタル広告会社、SSPやDSP事業者、アドエクスチェンジである。

また、広告代理店も、広告効果改善のための顧客分析など、プログラマティック屋外広告メディアサービスを提供している。IPG MediabrandsのMatterkind(アドテクノロジー専門ユニット)やDentsu Aegis NetworkのAmnetなど、主要企業が専門子会社を通じてプログラマティック屋外広告分野で事業を展開する。さらに、情報はプログラマティック屋外広告戦略の成功に極めて重要であることから、SSPやDSPを含め多くの事業者が情報プロバイダーの役割を担っている。たとえば、Hivestackはロケーションパートナーにより生成されたモバイルデータに基づきデジタル屋外広告を表示させる広告サーバーを有する。

プログラマティック屋外広告のバリューチェーン

出所:Uzabase作成

注:SSPとDSPは、広告会社と広告主がそれぞれ広告枠の自動取引に接続するためのツールまたはソフトウェアを指す

提携による広告在庫の統合が長期的にプログラマティック屋外広告の普及を後押し

プログラマティック屋外広告会社がDSPにデジタル広告スペースを提供するためにSSPと協業したり、SSPが広告在庫のプログラマティック取引ができるようにするためにDSPと協業したりするなど、バリューチェーン全体で提携が進んでいる。これらの提携は、リソースを統合し広告主が広告在庫にアクセスしやすいようにすることを目的としている。2023年4月、SSPのPlace Exchange(USA)はDSPのStackAdapt(CAN)と提携し、StackAdaptの顧客がPlace Exchangeのデジタル屋外広告の在庫にアクセスできるようになった。同年8月、SSPプロバイダーのBroadsign(CAN)はIllumin(CAN)と提携し、BroadsignのSSPとIlluminのDSPを統合することで、Illuminの顧客がBroadsignのプログラマティック屋外広告の在庫にアクセスできるようになった。

プログラマティック屋外広告は、企業間の提携強化とリソースの統合からメリットを享受するとみられる。今後の展望としては、プログラマティック・マーケットプレイスには広告スペースの入札が不可欠であり、標準的なデジタル広告の配置は、アドエクスチェンジ経由での取引に限定される可能性があることから、アドエクスチェンジ部門の成長が加速すると考えられる。

広告の関連性向上のため企業が活用

プログラマティック屋外広告は、現在、さまざまな業界がプログラマティック屋外広告を導入し、ターゲット顧客の絞り込みや従来型媒体での広告を補完するかたちで成果を上げている。

近年の最も顕著な例として、2019年5月にKylie Skin(USA)がスキンケアの新シリーズを発売する際に使用したプログラマティック屋外広告がある。このキャンペーンでは、AdomniのDSPを使用して、米国内1,000都市において4,300台以上の道路沿いのデジタル看板と1,500台以上のデジタルスクリーンで広告を配信し、その結果ウェブサイト上の全商品がその日のうちに完売したという。2018年5月には、Foodora(DEU)がドイツの主要3都市にあるオフィスビルのスクリーンネットワークを用いて、プログラマティック屋外広告キャンペーンを実施した。天候や時間帯によって広告を変え、たとえば悪天候時にはフードデリバリーの広告、晴天時にはテイクアウトの広告を配信し、その結果100万人のオーディエンスを獲得した。

青山 武史

青山 武史

グロービス経営大学院大学でMBAを取得し、キャリアを一貫してクリエイティブ、テクノロジー、ビジネスを高度に融合させた新規事業開発やイノベーションの創出を主導して来た。スタートアップ(最高事業責任者)や事業会社(マーケティング最高責任者)等でマーケティングからサービス開発までの新規事業開発の経験を積み、多くの事業で収益規模を拡大し、大手企業とのアライアンスに携わった。現在はYKK APにて新規事業開発部担当部長として、再生エネルギー事業の推進と新規領域の探索を担当。Point0を通して大手企業と共創活動を推進。渋谷未来デザインとSWiTCHとのカーボンニュートラルプロジェクト「CNUD」に参画。個人としても大手エネルギー企業のヘルスケ領域の新規事業開発支援コンサルティング実績多数。

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