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スマートホーム

文章最終更新日:2023年06月30日

トレンド概要

スマートホームのコンセプトは利便性、セキュリティ、省エネ

「スマートホーム」は、さまざまな機器を相互接続し、室温や照明、セキュリティ、エネルギー管理、エンターテインメントなどの機能を制御、自動化、最適化した住宅を指す。スマートホームシステムは、音声コマンド、モバイルアプリ、自動ルーチンなどを通じて作動予約するために、単一のプラットフォームから自宅内の様々な機器にアクセスできるため、利便性、セキュリティが高く、エネルギーの効率化を図れる。

スマートホームのコンセプトは、スコットランドの企業がX10を開発した1970年代に始まる。X10とは、互換性のある家電製品間であれば既存の電線を介した相互通信を可能にするプロトコルである。その後の研究開発を経て、2000年にLG Electronics(KOR)はインターネット接続機能を備えた初の冷蔵庫を発表した。

スマートホームの利点

出所:Intelを基にUzabase作成

中国では、スマートホームの研究開発は2013年に始まった。国内企業のXiaomi(小米科技)などのスマートフォン端末メーカーや家電大手のMidea(美的集団)などが主導し、その後も家電会社やBATと呼ばれるBaidu(百度)、Alibaba(阿里巴巴)、Tencent(騰訊)など大手IT企業が参入した。中国のスマート家電市場は依然として初期段階にあるものの、今後需要が伸び、家電市場全体の成長をけん引するとみられる。

一方、米国では、スマートホーム技術の導入がかなり進んでいる。調査会社ValuePenguinが2020年9月に実施した調査によると、米国人の約65%が1台以上のスマートホーム機器を使用していることがわかった。うち最も人気があるのは、スマートスピーカー(回答者1,000人のうち約31%が使用)、スマートサーモスタット(同約24%)、スマート照明(同約20%)であった。また、米国のWakefield Researchの調査によると、2020年の3月から12月にかけては新型コロナ感染拡大により自宅で過ごす時間が増えたことから、回答者の約51%がスマート家電を1台以上購入している。

スマートホームハブにより機器の相互接続が可能に

スマートホームには、日々の生活での作業を自動化できる多様なスマート家電が装備されている。スマートホームで重要なことは、互換性のある機器や家電製品をひとつのエコシステムに接続することである。すべてのスマート家電と家電には独自の内蔵ファームウェアがあるが、スマートホームハブが機器同士の通信を可能にする。さらに利便性の観点から、利用者は個々の操作ではなく、住宅内のすべての機器や家電を一つのハブで管理することを好む傾向がある。

スマートホームハブは、スマートフォン、タブレット端末、パソコンを通じてハードウェア機器を操作するタイプ(製品例:Samsungプラットフォームに接続するAeotec Smart Home Hub、AmazonのEcho、AppleのHomePod、GoogleのNest Hubなど)やソフトウェアやアプリだけのタイプ(製品例:Yonomi、Home Connectなど)が一般的である。

スマートホームシステムの接続性

出所:Uzabase作成

消費者にとって、異なるブランドの機器を接続できるかは大きな関心ごとのひとつである。一方、スマート家電メーカーは、顧客が同一ブランドの製品をそろえたり、少なくともそれを中心とするエコシステムを構築したりすることを期待する。Parks Associatesが2020年に発表した調査によると、スマートホーム機器所有者の約86%は、単一のアプリですべての機器を一括制御したいと考えている。スマート家電メーカーは、このニーズに応えるため、複数の接続プロトコルをスマート家電に搭載している。たとえば、IKEA(NLD)は2022年10月、改良型スマートハブ「Dirigera」を発表した。この製品はMatter規格(互換性を支える新しい接続規格)に対応するスマート機器であれば、メーカーを問わず接続可能であるという。

機器メーカーは相互接続性を高められるよう取り組んでいるが、機器同士が直接通信できないケースもあることから、スマートホームハブの使用を促している。Samsung「Aeotec Smart Home Hub」やAmazon「Echo」などのスマートホームハブには、Wi-Fi、Bluetooth、ZigBee、z-wave(コネクテッドデバイスの制御、監視、状態観察を目的に設計された無線通信プロトコル)対応機能が搭載されている。

相互接続性プロトコルの導入に向けた事業例

出所:OCF、Tech Advisor、CHEAAを基にUzabase作成

スマートスピーカーの販売拡大がスマートホーム市場の成長をけん引

市場には、利便性が高い音声認識技術を搭載したスマート機器が多数ある。個々の機器では、音声による指示を学習して動作するHoneywellのスマートサーモスタットや音声で操作できるSamsungのスマートテレビなどがあるが、スマートスピーカーが人気を得ているのは、スマートホームハブとしての機能を備えているためである。最新の開発品は、利用者が特定の情報(温度、ゲームのスコアなど)を見ることができる画面を備えたスマートスピーカーである。

コネクテッドデバイスとデータプライバシーの規制がスマートホーム事業に影響

スマートホーム自体に関する規制は少ないものの、近年ではIoT機器の使用に関わる一般規制の整備が進んでいる。たとえば、米国では2020年12月にIoT機器の使用に関わる初めての連邦法「IoT Cybersecurity Improvement Act of 2020(2020年IoTサイバーセキュリティ改善法)」が成立した。これにより、連邦政府のIoT化により生じるリスクに対処する計画である。

IoT機器のセキュリティに関わる規制・政策例

出所:米国の法律専門誌「The National Law Review」、経済産業省、英国のInformation Assurance for Small and Medium Enterprises を基にUzabase作成

また、コネクテッドデバイスは利用者の個人データを収集できることから、個人データに関するプライバシー規制がスマートホーム事業を行う企業に適用される可能性がある。

主要地域の規制・ガイドライン

出所:Uzabase作成

マネタイズ

米国がスマートホーム市場をリード、アジア太平洋は今後成長が加速する見通し

市場調査会社Data Corporationによると、スマートホーム機器の世界出荷台数は2021年に前年比約12%増となった。調査会社Strategy Analyticsによると、これに伴い、スマートホーム関連ハードウェア(サービスや設置費を含む)への世界支出額は、2021年に1,320億ドルに達した。この成長はコロナ後の市場回復にけん引されたもので、2020年に延期された事業が2021年に実施されたことが大きく影響している。

しかし、2022年の世界出荷台数は初めて減少に転じ、前年比約3%減の約8.72億台となった。最大のスマートホーム機器カテゴリーであるスマートTVの出荷台数は、同年に前年比約4%減少したが、これは主に2021年にコロナ関連の支出が増加したことが要因と考えられる。

IDCの予測では、スマートホーム機器の出荷台数は2023年に前年比2%程度の成長にとどまる。うち、スマートTVの出荷台数は、マクロ経済的な要因と買い替えサイクルがプラスに働き、減少を免れる程度となる見通しである。とはいえ、市場が回復するにつれて、スマートホーム機器の世界出荷台数は2022-27年にかけて年平均成長率(CAGR)約7%で増加し、約12億台に達する見込みである。スマートホームエコシステムへの関心の高まり、ブロードバンド普及率の上昇、ワイヤレスホームネットワークの拡大などが、市場成長を下支えすると考えられる。

地域別では、2021年の世界出荷台数に最も大きく寄与したのは北米であり(大半が米国)、これにアジア太平洋が約31%で続いた。すでにスマートホームが普及している北米は、2022-26年にかけても引き続き市場をリードするとみられる。一方で、ブロードバンド普及率の上昇とスマートホーム機器メーカーの台頭により、アジア太平洋が2026年までに北米を追い抜くとみられている(IDC)。

スマートホーム向け年間消費支出の推移(2015-27年)

出所:Strategy Analytics

注:2022年および2027年の支出額は推定値

スマートホーム技術が組み込まれた住宅は高額化

全米民生技術協会(CTA)および全米住宅建設業協会(NAHB)によると、米国ではスマートホーム技術の導入により、住宅の最終販売価格を3~5%引き上げることができる(2017年、入手可能な最新データ)。

住宅建設業者は、スマートホーム技術を新築住宅に採り入れることで、価格の引き上げが可能になる。最も基本的な機能(表参照)でみると、スマートホームへの転換コスト(市場価格)は約4,441~8,305ドルとみられる。

寝室2部屋の住宅にスマートホーム機能を追加する費用

出所: Uzabase作成

注1:費用については、2021年2月~2023年6月時点と各製品により異なる時点の価格を参照した

注2:増分費用は仮定

従来の住宅建設業者の利益率を7%前後と仮定すると(NAHBによると、住宅建設業者の平均純利益率は2020年に約7%)、最も高額なスマートホーム機能を追加した場合の価格は約3%の引き上げとなり、住宅建設業者の純利益率は約8%に上昇する(入手可能な最新データ)。

スマート機能を導入した場合の収益性

出所:Uzabase作成

ただし、スマートホーム機能が一般的になった場合、住宅建設業者は収益性を維持するためにコストを抑える方法を見つける必要がある。ひとつの方法は、スマート家電メーカーと提携して、市場価格よりも低いコストでスマート製品を調達することである。

住宅建設業者はスマートホーム提供企業と提携

出所:Lennar、ADT、Daily Democrat、CNBCを基にUzabase作成

未来

大企業がスマートホームバリューチェーンの多様な領域に進出

スマートホーム市場が進化するにつれ、モバイル・家電大手を中心とした企業は、機器やプラットフォーム開発から応用レベルまでバリューチェーン全体を重要視するようになっている。たとえばSamsung(KOR)、Xiaomi、LG(KOR)、Leedarson(立达信物联科技、CHN)、Amazon(USA)といった企業は、バリューチェーンの1)技術開発(半導体チップやセンサなどの部品やプラットフォーム)、2)サービス(モバイルアプリ、ネットワークサービスなど)、3)応用(家電、住宅建設、セキュリティなど)の3領域すべてで事業を行っている。これらの大手企業は、ユーザーの行動に関する入手可能な情報を活用し、新規参入に比べて容易にバリューチェーン内で事業を水平に拡大している。たとえば、Xiaomiはスマートフォンを「オムニリモコン」として利用し連携・制御できる製品を発売することで、スマートホーム市場への参入を果たした。Huawei(CHN)もスマートホーム分野に対応した独自のアプリケーション「HUAWEI AI Life」を発表した。

スマートホームのバリューチェーン

出所:Uzabase作成

スマート家電がビジネスモデルと情報の流れを変える

コネクテッド製品は、自らの状態と環境をモニタリングする機能を備えており、これまで得られなかった洞察を得るのに役立つ。メーカーはこのデータを利用して、製品を顧客の好みに合うよう調整することができる。LG Electronicsは、2019年にロボット掃除機、洗濯機、冷蔵庫、エアコンに搭載することで、利用者の使い方を学習することができるAIチップを開発した。また、2020年9月には韓国で居住者の生活習慣を学習しエネルギー使用量を調節できるエネルギー管理システムを備えたスマートホームのモデルハウス「LG ThinQ Home」を公表した。

スマート家電メーカーは、顧客の行動に関する大量のデータを直接収集できる。このデータは、関連するネットワーク内にいる他のプレイヤーにとって価値を提供する可能性がある。Google(USA)は、顧客の利用状況と関心ごとのデータを提供する広告のカスタマイズに利用すると表明している。Amazonは、スマートスピーカーから収集したデータを利用し、一部の顧客に対し他社の商品を提案している(他社に顧客の個人情報は提供しない)。

スマート製品における情報の流れ

出所:Uzabase作成

スマート家電メーカーによるコネクテッド製品のサービス化(Product-as-a-Service)

スマートホーム技術の拡大における大きな障壁は、スマート家電の価格である。PwCが2016年10月に実施した調査によると、回答者1,000人うち約42%が購入する際の主な懸念事項として価格を挙げている(入手可能な最新データ)。セキュリティシステムを中心としたスマート機器の一部のメーカーは、サービス内容に応じてサブスクリプションのパッケージを提供している。サブスクリプション形式では、利用者は先行投資を抑えながら、月額料金を支払うことで製品を利用することができる。メーカーにとっては、製品のライフサイクル全体にわたって定期的な収益を見込め、スマート家電に付随する費用を賄うことができる。また、売って終わりではなく、顧客と長期的な関係を維持できるため、ブランドへのロイヤルティ構築にも役立つ。

スマートホーム企業Hive Home(GBR)は、サブスクリプション形式(定期購入)で利用できるスマートホーム製品「HomeShield」を提供している。なお、同製品の使用には毎月14ドル(10ポンド)程度の利用料がかかる(2021年10月時点)。顧客はサブスクリプションのサービス期間を一時停止することもでき、サブスクリプション期間の満了後に利用を継続することも選択できる。

Googleの「Nest」は、スマートホーム向けにサブスクリプションのビデオストレージサービス(月額6ドルと12ドルのパッケージ、2023年6月時点)を導入している。このサービスではハードウェアは提供されないものの、将来的な使用のために録画を保存することが可能となる。

Savant System(USA)の「Da Vinci 10.0」(2022年2月発売)は、ホームオートメーション企業が提供する初のスマートホームサブスクリプションとされている。Apple TVやRing向けの「Savant Home App」のように特定のライセンスが必要なソフトウェアも、サブスクリプションによって最新のコンテンツが利用できる。

スマート家電には、通常の保証期間に加えて、製品のライフサイクル全体にわたって継続的な追加費用がかかる。データを保存するストレージ料金や、プライバシー関連のモニタリングやプライバシー関連の対応には、追加費用が発生する。さらに企業にとってハードウェアを購入する初期コストは高く、支払い不履行のリスクは考慮すべきひとつの要因である。製品のサービス化(Product-as-a-Service)モデルを採る企業は、顧客がサブスクリプション料を支払いできなかった場合に製品を回収する手段を特定する必要もある。

ハッキング対策用セキュリティシステムを別途提供するメーカーが中心

スマートホーム市場では一般的に、侵入者がシステムをハッキングして個人データにアクセスするなど、プライバシー侵害が懸念される。2019年9月にGoogle「Nest」のスマートセキュリティカメラとサーモスタットがハッキングされたことは、スマート製品の信頼性に疑問を投げかけた一例となっている。

最終的にプライバシー対策を製品に統合することは機器メーカーにとって必須となるが、現在は侵入者に対するセキュリティを別の製品として提供している企業がある。

ハードウェアファイアウォールのプロバイダー例

出所:Uzabase作成

機器メーカーはスマートホーム技術の普及拡大を目指す

Googleは2017年、住居の状況をスキャンして分析し、検出に基づいたサービスを提供する機器の特許を取得した。認識システムを使用した機器は利用者の収入や好みをカテゴリーに分け、服をスキャンすることでファッションの好みを理解し、何を鑑賞し、どこで買い物をすべきかなどを勧めることができる。Googleは、「Nest」の導入により可能なコスト削減の統計資料を公表することで、製品の価値を消費者に示し市場シェア拡大を狙う。GE Appliances2015年、スマート機能のない冷蔵庫を持つ既存顧客2万人にアップグレードキットを提供し、顧客がスマート冷蔵庫を体験できるようにした。同社は、顧客がどのようにスマート家電を使うかを研究し、フィードバックを集め、将来のスマート家電利用の推進を図っている。

一方BaiduやAlibaba、Xiaomiなど中国のスマートホーム企業は異なる戦略を採っており、スマートスピーカーの価格を引き下げ(元の価格から約4~5割安)し、認知度の向上と市場の啓発に取り組んでいる。Xiaomiは、テレビ、床掃除ロボット、電気ケトル、空気清浄機、ソケットなど、ほとんどの家電製品を製造していることから、スマートホーム分野にも単独で参入している。Xiaomi製の家電はすべて自社アプリで制御できる。Xiaomiと同じ戦略を展開しているBaiduは、スマートホームの普及推進を目的に体験型ストアを開設した。Alibabaは現在、XiaomiやBaiduほど多くの種類の家電製品を製造していないため、Hangzhou EZVIZ Network(CHN)と提携してスマートホーム分野に進出している。

青山 武史

青山 武史

グロービス経営大学院大学でMBAを取得し、キャリアを一貫してクリエイティブ、テクノロジー、ビジネスを高度に融合させた新規事業開発やイノベーションの創出を主導して来た。スタートアップ(最高事業責任者)や事業会社(マーケティング最高責任者)等でマーケティングからサービス開発までの新規事業開発の経験を積み、多くの事業で収益規模を拡大し、大手企業とのアライアンスに携わった。現在はYKK APにて新規事業開発部担当部長として、再生エネルギー事業の推進と新規領域の探索を担当。Point0を通して大手企業と共創活動を推進。渋谷未来デザインとSWiTCHとのカーボンニュートラルプロジェクト「CNUD」に参画。個人としても大手エネルギー企業のヘルスケ領域の新規事業開発支援コンサルティング実績多数。

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