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ソーシャルコマース

文章最終更新日:2023年11月20日

トレンド概要

インフルエンサーマーケティングとソーシャルコマースに注目

近年、SNSや動画サイトなどのソーシャルメディアと、ソーシャルメディア内で多数のフォロワーを持つユーザー(インフルエンサー)の役割が拡大している。本レポートでは、インフルエンサーを活用して商品・サービスの宣伝を行う「インフルエンサーマーケティング」と、ソーシャルメディアから直接商品を販売する「ソーシャルコマース」を扱う。

関連業界とソーシャルコマース、インフルエンサーマーケティングの概念図

出所:Uzabase作成

広告主はインフルエンサーを通してユーザーをターゲティングできる

インフルエンサーマーケティングの特徴は、ユーザーとのコミュニケーションをインフルエンサーが行うことにある。コンテンツはユーザー目線に落とした「口コミ」としてインフルエンサーが作成し、フォロワーからのコメントなどにもインフルエンサーが対応する。

インフルエンサーは、美容、スポーツ/ボディメイクなど分野別に分かれており、各分野に興味を持つユーザーがフォロワーとなっている。したがって広告主である企業側は、間接的にユーザーをターゲティングすることができる。また、フォロワーはインフルエンサーの発信する情報に注目しているため、通常の広告よりもクリック率やコンバージョン率(サイト訪問者等のうち目的の行動に至った率)がよいとされる。

従来型マーケティングとインフルエンサーマーケティング

出所:Uzabase作成

ソーシャルコマースは中国で発達

ソーシャルメディアでのインフルエンサーの投稿から、直接商品を購入するソーシャルコマースの形態は中国で発達した。Xingin Information Technologyが運営する小紅書はその代表例である。アプリ内で商品購入が可能なECサービスであると同時に、基本的なソーシャルメディア機能を持つ。ユーザーはテキスト、写真・動画の投稿、好きなアカウントのフォロー、または好きなコンテンツにコメントを残すことができる。

小紅書内の投稿とEC画面

出所:小紅書を基にUzabase作成

ソーシャルメディアを介した消費行動が浸透

インフルエンサーマーケティングやソーシャルコマースが拡大している背景には、ソーシャルメディアの影響力やコンテンツの拡大がある。

ソーシャルメディアにおいて人気コンテンツを発信するユーザーが、若年層を中心に多数のフォロワーを抱え、特定の分野や年代で強い影響力を持つようになった。

またコンテンツの拡大もソーシャルコマースに寄与している。2010年代にユーザー数が拡大したInstagramは、画像をベースコンテンツとしており、ショッピングへの親和性が高い。さらにTiktokなどの動画SNSでは商品の詳細な解説が可能となり、ユーザーの消費行動を直接喚起することができる。

消費者側も、若年層を中心にソーシャルメディアを介した消費活動に積極的である。GfKの調査では、米国の15-22歳の37%がソーシャルメディアで購入ボタンを使用すると回答している。

インフルエンサー自身がブランドを立ち上げて事業を展開する事例もあり、ソーシャルメディアを介した消費やマーケティングは一般的なものとなっている。

米国 ソーシャルメディアを通じた消費行動

出所:MarketingCharts.com, GfK

広告規制が強化される一方、個人情報保護規制が市場拡大を後押し

インフルエンサーによるマーケティングは効果が高い一方、いわゆるステルスマーケティング(広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すこと)となってしまう恐れがある。特に健康関連商品などの分野では不当に効能を強調する投稿表示によって、健康被害が発生したケースがある。そのため各国では表示方法などに規制を設け、コンテンツ型ソーシャルコマースやソーシャルメディアでの宣伝投稿に対して、「広告」を明記することをインフルエンサーに求めている。米連邦取引委員会(FTC)は2017年に「エンドースメントガイドライン」の違反に対する取り組みを本格的にスタートしており、広告主やインフルエンサーに対して、罰則を科すケースが増加している。また、中国では、中国広告協会が2020年にライブコマースに関する行動規範を公表しており、広告主、インフルエンサーなどに対して、規制強化を進めている。

主要な広告表示規制

出所:公開資料を基にUzabase作成

一方で、世界的に個人情報保護にかかる規制が強化されており、この潮流がインフルエンサーマーケティングを後押しする可能性がある。デジタル広告においてクッキーや広告IDなどユーザーを追跡する機能が制限されつつあり(詳細はポストクッキーマーケティング、デジタル個人情報のレポートを参照)、広告主はユーザーをターゲティングしにくくなっている。インフルエンサーマーケティングでは個人情報の問題が生じにくいため、企業がより多くの予算を配分する可能性がある。

マネタイズ

インフルエンサーマーケティングはエンゲージメント率が高い

一般的に、インフルエンサーマーケティングは通常のデジタル広告よりもユーザーの反応がよいとされる。インフルエンサーマーケティングでよく使用されるエンゲージメント率(いいね、クリック、シェアなどのユーザー反応率)、コンバージョン率(訪問者等のうち目的の行動に至った率)を下表の数値で仮定すると、ユーザーの獲得コストはインフルエンサーの方が低い場合がある。

ただし、エンゲージメント率はインフルエンサーによって大きく異なり、また投稿内容によっても変わってくる。広告商品とインフルエンサー・フォロワーの合致度、投稿内容によっては想定した成果が出ないこともありうる。

Instagramの広告費用試算

出所:Uzabase作成

インフルエンサーを使ったライブコマース市場も拡大傾向

インフルエンサーマーケティング市場の中で、ライブ動画配信によって商品を販売するライブコマース市場が特に拡大傾向にある。現在は、中国が主な市場となっているが、今後は米国などでも拡大する可能性がある。中国のライブコマースは、従来の広告と比べて、ライブ中に商品のサイズや使用感が分かりやすい、割引などでお得に購入できるなどの点から消費者に受け入れられ、コロナ禍でさらに成長が加速した。

Foresight Research によると、2022年のグローバルでのインフルエンサーマーケティング市場規模は、推計164億ドルにまで拡大し、2023年には推計211億ドルに成長するとの予測もある。

グローバルのインフルエンサーマーケティング市場

出所:Influencer MarketingHub、The Business Research Company

未来

中国ではコンテンツ作成・配信に対する支援企業が登場し、商流が変化

中国では、コンテンツ型ソーシャルコマースやインフルエンサーマーケティングの拡大や関連政策の変化により、関連する商流に変化が起きている。商品提供側、インフルエンサーやEC側の間にマーケティングコンテンツの内容作成・配信に対する支援企業が出現し、関連サービスの成熟により、バリューチェーン全体において、より緊密な連携が進む。

例として、商品提供側とインフルエンサーの間にインフルエンサーのマネジメントをするMCN(Multi-channel Networks)機構が入り、インフルエンサーに対し、広告主との交渉、コンテンツ作成・配信支援などのサービスを提供し、両者のかけ橋となる。

コンテンツ作成・配信のバリューチェーン

出所:Uzabase作成

中国のソーシャルコマース企業は、物流等の関連業界も手掛ける

中国では、ソーシャルコマース内に決済機能がある場合が多い。小紅書も当初はレビュー掲載サイトであったが、EC機能を付加してソーシャルコマースの代表企業となった。

現在小紅書は日本と欧米などの国・地域に倉庫、輸送拠点を設け、物流網を整備している。自社販売サービス以外に、第三者のブランド・小売業者へも物流サービスを開放した。また、同じくソーシャルコマースの蘑菇街は「美丽说」を買収した後、「美丽说」の傘下にあったネット決済サービスを自社のサービスに導入し、ユーザーに短期的なショッピングローンなどの決済・金融サービスを提供する。

中国企業のバリューチェーン拡大

出所:公開資料を基にUzabase作成

中国では景気減速など外部環境の変化が、プレイヤーの動向にも影響

中国のEC市場はこれまで2桁の高成長を続けてきたが、景気減速懸念やコロナ禍での消費減退などで成長は鈍化しつつある。またライブコマースおよびトップインフルエンサーに対する政府の取り締まりなど外部環境の変化とともに、プレイヤーの動向が分かれてきている。

主要プレイヤーの動向をみると、静止画投稿によるレビューコミュニティを核とする小紅書は広告収入が主だが、ライブコマースやEC事業の拡大を進めてきた。特にEC売上拡大のため外部リンクの掲載を停止した結果、利用者・インフルエンサーの利便性が低下し離脱を招いているとの指摘もあり、難しい舵取りを迫られているようだ。ファッションECでライブ配信も行う蘑菇街は売上の減少が続く。

なお動画投稿サービスでトップの抖音や快手はライブコマースも好調だが、物流などの機能に課題があるとされる。

総合ECであるAlibaba傘下の淘宝は、2021年までライブコマースでは複数のトップインフルエンサーを抱えていたが、政府の取り締まりによってトップインフルエンサーの一部が活動を停止し売上が減少した。1名は活動を再開したと報じられているが、今回のような事態を回避するため今後中級レベルのインフルエンサーの育成を強化するようだ。

米国ではソーシャルメディアとEコマースが連携を進める

市場としてはまだ中国が中心であるものの、米国企業を中心にソーシャルメディアとEコマースが接続する動きが活発化している。

Twitter(現X)は2022年6月に米国でショッピング機能の提供、さらにShopifyと連携することで、Twitter(現X)上で直接商品を販売できるようになると発表している。YouTubeとShopifyも同7月に連携機能を発表、動画配信ページにShopifyの商品を表示しユーザーを誘導できる。

一方で、Metaは2017年頃からいち早くショッピング機能に取り組み、InstagramではShopifyとの連携でアプリ内購入まで完結、WhatsAppではビジネス版にカタログ機能などを搭載している。ただし近年は一部機能を縮小しており、Facebookのライブショッピング機能を2022年10月に停止、Instagramについては2023年2月にショッピングタブが削除された。

青山 武史

青山 武史

グロービス経営大学院大学でMBAを取得し、キャリアを一貫してクリエイティブ、テクノロジー、ビジネスを高度に融合させた新規事業開発やイノベーションの創出を主導して来た。スタートアップ(最高事業責任者)や事業会社(マーケティング最高責任者)等でマーケティングからサービス開発までの新規事業開発の経験を積み、多くの事業で収益規模を拡大し、大手企業とのアライアンスに携わった。現在はYKK APにて新規事業開発部担当部長として、再生エネルギー事業の推進と新規領域の探索を担当。Point0を通して大手企業と共創活動を推進。渋谷未来デザインとSWiTCHとのカーボンニュートラルプロジェクト「CNUD」に参画。個人としても大手エネルギー企業のヘルスケ領域の新規事業開発支援コンサルティング実績多数。

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