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VR/MR/AR

文章最終更新日:2024年01月25日

トレンド概要

xRのビジネス活用は訓練、商談、遠隔ナビ、デザインレビューを中心に拡大

VR、AR、MRは総称してxRと呼ばれる。

xRは、現実と非現実の融合度にもとづいて分類される。全てがCG映像のものがVR、現実世界とデータや映像を重ねるものがAR、現実世界にデータや映像を重ねた上でそれを直接操作できる(現実と相互作用がある)ものがMRとなる。

xRはビジネス領域でも訓練や商談、遠隔ナビゲーション、デザインコンセプトのレビューなどでの活用が進んでおり、コロナ禍ではコミュニケーション手段としてのVR活用にも注目が集まった。

本稿ではxRのうち、ゲーム・エンターテインメントを除くビジネス領域を対象とする。また、xRの用途先としてメタバースが注目されている。ここでは、「主にxRデバイスを用いてバーチャル空間でコミュニケーションを行うもの」をメタバースとして扱う(メタバースの概要については下記の記事を参照)。

【注目テーマを読み解く:メタバース前編】メタバースの真価とは(2022年1月)

【注目テーマを読み解く:メタバース後編】メタバースの課題と今後を占う(2022年2月)

没入感のVR、リアルでの利用可能性が高いAR/MR

VR、AR、MRの違いは曖昧な部分もあるが、本稿では下表のように区分する。

VRは3DCGや360°動画を使用し、深い没入感が感じられるが、リアルデータとの関連性はほぼない。

ARはこれまで3つの段階を経て進化してきた。2010年代前半にカメラ撮影とレンズへの投影が主だった単純なスマートグラス(AR-Ⅰ)、2010年代半ばにスマートフォンなどでカメラ映像や位置情報を解析しデータを投影するARアプリ(AR-Ⅱ)、2020年前後に映像解析を含むより高機能なスマートグラス(AR-Ⅲ)である。透過型のため現実と照らし合わせて使用でき、高機能なものではカメラ映像を解析して映像投影などを行う。

MRでは、さらに進んで空間や手の動きなどを高度に解析し、投影した映像データを現実のものと同じように扱うことができる。デバイスは透過型HMDが主であったが、近年はVRデバイス(非透過型HMD)に搭載したカメラ映像を通してMRを実現(パススルー)する製品も増えている。

xRの特徴

出所:Uzabase作成

*Glass Enterprise Edition 2

**名称未定

注1:HMDはヘッドマウントディスプレイ

注2:例の分類は、複数機能を持つデバイスは主機能で分類

VRは販促や訓練、デザイン利用が主、コロナ禍では展示会や研修での導入事例も

xRの中でもVRは比較的ビジネス利用が進んでいる。用途先は販促物にコストがかかる不動産や自動車などの商談や危険を伴う安全訓練、手戻り防止が開発コスト削減につながるデザイン分野が主である。2020年以降はコロナ禍でxRの非接触性が評価され、コンシューマー領域ではバーチャル旅行、ビジネス領域では展示会や対面・集団での実施が難しくなった研修での利用も見られた。

xRのビジネス利用事例

出所:Uzabase作成

xR発展の背景にはトラッキング技術の発展

xRでは、対象と操作者の位置関係を常に算出し、リアルタイムに表示することが必要となる。たとえば、VRでは、操作者の頭の向きやコントローラーの位置をセンサなどで把握し、空間内における位置を解析する(ヘッドトラッキング、ポジショントラッキング)。2010年代後半に登場したデバイスでは、頭の上下左右への回転と傾きの3DoF(3 degrees of freedom)に加え、身体の前後左右上下への移動が加わり6DoFとなったことで、より没入感やリアリティが感じられるようになった。近年では、手の動きや視線を認識して操作に活用する技術や、メタバース上のアバターにデバイス着用者の表情や体の動きを反映する技術の導入も進み、バーチャル空間上でのノンバーバルコミュニケーションも可能となってきている。

対象物や空間が最初から規定されているVRに対し、ARやMRでは現実の部屋や物体などについても認識・解析が必要なため、より高度な技術を要する。直近では、Alphabet(USA)、Apple(USA)、Nianticがカメラ画像とサーバ上のARマップを照合して、屋内でも高精度に位置や方向を特定できるビジュアルポジショニングシステム(VPS)を発表した。ナビゲーションの3D表示やARサイネージ、自動車のフロントナビゲーションなどへの活用が期待されている。

VR/AR/MRのトラッキング手法

出所:Uzabase作成

開発者ツールやプラットフォーム、標準化が市場拡大に寄与

市場拡大にはデバイスだけでなくコンテンツ/アプリケーションの拡充も必須であり、これには制作ツールや配信プラットフォームが寄与している。

特にGAFAMなどが提供するツールやプラットフォームは影響が大きく、ゲームエンジンなどの開発ツールが少ないAR/MR領域ではAppleの「ARKit」やAlphabetの「ARCore」、Nianticの「Lightship」などがその役割を担っている。また、2023年6月にAppleはxRデバイスの「Apple Vision Pro」用のプラットフォーム「visionOS」をリリースした。

VR領域ではAWS(USA)のVR/AR制作ツールのAmazon Sumerianや、Meta(USA)のOculus用VR配信プラットフォームなどがある。

近年ではプラットフォーム間の互換性向上のため標準化も進んでいる。2017年にはxRのアプリケーションとデバイス間の標準仕様であるOpenXRがロイヤリティフリーのオープンプラットフォームAPI規格として開発され、主要なXRデバイス、ソフト関連企業がサポートしている。これによりコンテンツが各デバイスやプラットフォームに対応することが容易になる。またWebブラウザ上で動作する規格ではWebXRがある。

マネタイズ

VRは商業分野、ARは製造分野に加えて医療分野も市場成長を促す見込み

VRの市場はVR元年といわれた2016年から市場は拡大し、Grand View Research によると2022年で600億ドル、2030年には4,353億ドルになると予想されている。また2022年時点の内訳では主に自動車、不動産の販売、小売などの商業分野での使用が増加し今後も成長の可能性があるとしている。また、ヘルスケア分野が2030年までに最も成長するとしている。

一方、ARの市場規模は、Grand View Research によると2022年で385億ドル、2030年には5,975億ドルになると予想されている。2022年時点の内訳では製造部門のシェアが最も多く、エラーや欠陥の特定などによりダウンタイムの削減に寄与するとしている。今後特に成長率が高い分野として医療分野が挙げられ、研修や外科手術などの視覚化などでの活用が期待されている。

世界のVR市場

Grand View Research公表の数値を基にUzabase作成

注:数値表記がない年はデータ非公表

世界のAR市場

Grand View Research公表の数値を基にUzabase作成

注:数値表記がない年はデータ非公表

メタバースのB2C用途はプラットフォームユーザ数、デバイス数ともにまだ非常に少ない

コロナ禍を契機に注目が集まったメタバースについては、まだ発展途上といえそうだ。

メタバースをB2C向けのブランディングや販促・販売チャネルとして利用する際は、一からサービスを立ち上げるのではなく、既に一定数のユーザが存在するプラットフォームサービスを利用し、ユーザがxRデバイスからアクセスする形が主となるだろう。この場合、リーチできるユーザ数はプラットフォームのユーザ数やアクセス手段であるデバイスの普及数に大きく左右される。

主なメタバースプラットフォームの1日あたりのユーザ数は、VR Chat、MetaのHorizonWorldsともに数万人程度と見られており、メタバースと比較されることの多いSecond Lifeの数十万人(2013年公表値から推定)より少なく、既存SNSであるFacebookの数十億人(Meta公表)と比較して1%未満である。なお、PCやゲーム機ユーザが主体と見られるが、ゲームにコミュニケーション要素が加えられた「ROBLOX」や「Fortnite(VR非対応)」でも数千万人となっている。

また、体験手段となるVRデバイスの数は、IDCによると2023年に出荷台数が959万台、2027年に2,465万台を超えると予想されている。しかし、2022年の出荷台数は855万台と前年比21%減、2023年も最新予測(2023年12月時点)では810万台とされ、右肩上がりの増加となるかは疑問が残る。加えて、スマートフォンの出荷台数十数億台と比較するとはるかに少ない。2024年はAppleの「Apple Vision Pro」発売に注目が集まるが、年内の生産台数が数万台~数十万台と報じられており、高価であることから現時点でデバイス普及数への影響は大きくない。

このような状況から、現時点でメタバース上でのサービスから大きな売上を得ることや、広告で多くの顧客のリーチを獲得することは、既存サービスとの比較で規模が小さく難しいと考えられる。実際に、Metaは2022期からVRセグメント(Reality Labs)の決算報告を行っているが、大幅な赤字となっており、同社は多額の投資を行うため今後3~5年はかなりの赤字を見込んでいる。また、同社が目指す姿の実現には10-15年かかるとしており、メタバースはまだ投資フェーズにあると推察される。

ただし、現在のユーザ層は流行に敏感なイノベーター層や若年層が多いと考えられ、特定のユーザにターゲットを絞った広告や、大型イベントへの出展といった形でこの層へのリーチが見込める可能性はある。実際にHIKKYが主催する世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」では100万人の来場者があり、数十社の企業や団体、自治体などが出展をしている。また、ROBLOXでも多くの企業がコンテンツを提供しており、特に若年層へのリーチが期待できる。

世界のVR/ARヘッドセット出荷台数

出所:IDCの公表値を基にUzabase作成

未来

デバイスだけでなくソフトウェアやコンテンツにも注目が集まる

xRに関わる企業は、デバイス、開発ツールとしてのソフトウェア、個別サービスとして制作されるソフトウェア(コンテンツ)、サービスを提供する基盤であるプラットフォームサービス、活用領域(ユーザー)などが存在する。

活用領域は製造、訓練・研修、建設、販促、エンタメなど多岐に渡るが、現時点では安全教育や技能訓練などの訓練・研修分野、不動産や自動車販売などの販促分野などでVRの活用が進んでいる(建設分野でのテクノロジー利用についてはトレンド「建設テック」を参照)。今後は、製造業や建設業においても徐々に活用が進むとみられる。

なお、AR(スマートグラス)とMRについてはまだ普及は進んでいない。

(各企業の具体的な取り組みは「取り組み事例」を参照)

バリューチェーン

出所:Uzabase作成

VRは研修・訓練や不動産・クルマの販促、製造分野はデザインレビューで活用

VRにおいて現在活用が進んでいるものは、住宅や車の販売、安全訓練や教習など、費用対効果の高さが予想しやすい分野である。

たとえば、Audi(DEU)やトヨタは顧客がVRで様々な色やオプションを体験できるバーチャルショールームを展開している。メタバースの活用事例では、AudiがVR Chat内で行われたバーチャルマーケットにも出店、日産自動車はVR Chat内にバーチャルギャラリーを立ち上げ、新型EVの試乗体験といった販促活動に活用している。2023年にはトヨタがCluster上でバーチャルガレージをオープンした。

小売業では、Walmart(USA)が2018年に全米店舗従業員の教育向けに導入し研修に活用、さらに2019年にはVRによるスキル評価も導入している。2022年にはイオンリテールが約360店舗にInstaVRを導入し、レジ業務や接客、防災・防犯などの研修を行っている。2023年にはファミリーマートも店舗スタッフ向け研修プログラムを全国加盟店へ導入した。

製造分野では自動車の車両デザインで活用が始まっている。Ford Motor(USA)やBMW(DEU)、ホンダなどが車両デザインにVRを導入し、遠隔地の拠点間での並行開発などに活用しているほか、CADデータをxRデータに変換するサービスも充実しつつある。デジタルモックアップや現場のレイアウト変更、メンテナンスなどをxRで行うことで、コスト・期間の圧縮につながる可能性がある(製造業などにおけるデジタル空間でのシミュレーションについてはトレンド「デジタルツイン」を参照)。

パススルー対応デバイスによりMR

VRはビジネス領域でも普及段階にあるが、開発段階であったMR/ARもパススルー対応の非透過型HMDデバイスの登場でハードウェア環境が整い始めている。

MR/ARはこれまで透過型HMDの開発が進められてきたが、いずれも難航している。Microsoft(USA)は2019年にHololens2をリリース、Magic Leap(USA)は2022年にMagic Leap2を発売している。しかし、いずれも機器およびコンテンツ制作のコストが高く、画質や画角、利用可能な機能を考慮すると導入可能な領域は限定的とみられる。2023年にはMicrosoftが提供している「Windows Mixed Reality」は将来的に廃止することが発表され、Hololens開発チームのレイオフも報じられている。 また、新型ARグラス(AR-Ⅲ)の開発を進めていたAlphabetは2019年にGlass Enterprise Edition 2を発売したが、2023年3月に販売終了となった。Metaは2021年にARグラスProject Nazareを発表したがまだ数年先としている。同社は、Reality Labsセグメント支出の半分以上をAR研究に投じているとされる。

一方、近年は非透過型HMDに、パススルー機能を搭載したVRデバイスがMetaやHTC(宏達國際電子、TWN)、Beijing Bytedance Technology(北京字节跳动科技、CHN)などの主要メーカーから販売されており、VRとAR/MR両方のコンテンツに対応している。2024年2月にAppleから発売予定のxRデバイスもパススルーによるMRを実現しており、さらに着用者の目元を外部ディスプレイに表示(逆パススルー)することで疑似的に透過HMDのような見た目となっている。今後、これらパススルー対応非透過型HMDデバイスの普及が進めば、VRの普及拡大と共に、AR/MRのハードウェア環境も整ってくるだろう。

5Gとクラウドコンピューティングの組合せがxRの普及を促進

xRのビジネス利用には、VR技術以外にもネットワーク環境の課題がある。前述のFord Motorでは世界各地のデザイナーによる同時作業が必要となるが、現在のネットワーク環境では、大容量のデータを遅延なく送信することが難しい。しかし、5Gによって低遅延、大容量・超高速通信が実現することでxRの普及促進が期待されている(5G関連ビジネスについてはトレンド「5Gにおける新規ビジネス」を参照)。

5Gが普及すると、VRやARのグラフィック処理をクラウドで行い5G、Wifi通信でストリーミング配信するクラウドレンダリングも普及しやすくなる。NVIDIA(USA)はVRやARのグラフィック処理をクラウドで行い、5G、Wifi通信でストリーミング配信する「CloudXR」を提供している。これにより高精細なバーチャル空間を低価格なxR端末で体験でき、また端末自体の軽量化を図れる可能性がある。2022年にはEVバッテリーメーカーHyperbat(GBR)やBT(GBR)、Ericsson(SWE)などと協力したバッテリー設計の概念実証や、Autodesk(USA)と協力してポルシェのEVのVR展示を行った。また、Alphabetも「Immersive Stream for XR」で同様のサービスを提供している。

特に5Gの商用化が進む中国では、2022年11月に工業・情報化部などが「仮想現実と業界応用の融合発展行動計画(2022-2026)」を公表し、その中でVRと5Gの統合を掲げ、推進を図っている。

青山 武史

青山 武史

グロービス経営大学院大学でMBAを取得し、キャリアを一貫してクリエイティブ、テクノロジー、ビジネスを高度に融合させた新規事業開発やイノベーションの創出を主導して来た。スタートアップ(最高事業責任者)や事業会社(マーケティング最高責任者)等でマーケティングからサービス開発までの新規事業開発の経験を積み、多くの事業で収益規模を拡大し、大手企業とのアライアンスに携わった。現在はYKK APにて新規事業開発部担当部長として、再生エネルギー事業の推進と新規領域の探索を担当。Point0を通して大手企業と共創活動を推進。渋谷未来デザインとSWiTCHとのカーボンニュートラルプロジェクト「CNUD」に参画。個人としても大手エネルギー企業のヘルスケ領域の新規事業開発支援コンサルティング実績多数。

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